第18話 こんにちは、新たなおともだち
「わぶっ!」
「キャンッ!」
子犬のダイレクトアタックを受けて、わたしがひっくり返る。
「いてて……」
わたしは鼻を押さえながら起き上がった。なんでこんなところから子犬が……と思った直後、辺りにブブブブブ! という耳障りな羽音が響く。
『メグ!』
ファブニールさんに名前を呼ばれたのと、わたしの目の前に巨大な蜂が現れたのは同時だった。
蜂の頭は大きく、わたしの頭と同じぐらいの大きさだ。
しかも、蜂はお尻の針をわたしに突き刺そうとしていた。その針も太いなんてものじゃない。もはや杭だよ、杭! それも、ヴァンパイアの心臓にぶっさせるくらいの!
「ひえぇぇ!!!」
私が叫ぶと同時に、ボォオオッ! とカラちゃんの火炎放射が飛んでくる。丸焦げになった蜂が、黒い塊となってぼたりと地面に落ちた。
「た、たすかった……! ありがとうカラちゃん……!」
『メグてんてー! まだいるの!』
カラちゃんの言葉通り、巨大蜂は一匹だけではなかった。ブブブブブと、何十匹もの巨大蜂が茂みから現れ、怒ったように唸っている。
「ひゃぁあぁ! 助けてえええ!」
『カラちゃんにまかしぇてー!』
そう言うと、カラちゃんが意気揚々と前に飛び出した。その隣には、ぶるるん! と勢いよく震え立つスーちゃんもいる。ふたりは戦闘態勢に入ると、片っ端から蜂を叩き落とし始めた。
「ふ、ふたりともがんばれ~~~! カラちゃんもスーちゃんも強いよ超強い! 蜂さんに全然遅れをとってないし、なんなら上回っているよ! すごい! ふたりともやればできる子!」
わたしは必死に応援した。わたしの褒めがどれくらい効果を持つのかわからないけれど、少しでもふたりの力になるのならと思って褒めまくったの。
「カラちゃんすごいよ! 炎が自由自在だね! よっ! 歩く火炎放射器!」
それって誉め言葉としてどうなのかなあ? と冷静なわたしが突っ込むけれど、特に問題はなかったようで、勢いを増したカラちゃんがボォオオと次から次へと巨大蜂を燃やしていく。
「スーちゃんもすごいよ! 勢いが鋭すぎてもはや水の矢だね! 蜂さんたちを全部射落としちゃえ!」
ピュピュピュッ! とスーちゃんの口から吐き出された水が、ドスドスドスッと見事に全段命中する。体に大きな風穴を空けられた蜂は、ふらふらとよろめいてから落ちて絶命した。
炎と水が宙を飛び交う中、少しずつ空を飛ぶ蜂の姿は消え、代わりに死体が積みあがっていく。
『ほっほっほ。上出来上出来。子らよ、やるではないか。助太刀しようかと思っていたが、いらぬ世話だったな』
そう言ってファブニールさんが上機嫌に笑う頃には、空を舞う蜂は消えていた。いるのはわたしの足元でぷるぷると震える、緑っぽい子犬だけ。
「た、助かったあ……。ふたりとも本当にすごいよ……!」
わたしがほっと息をついた時だった。
こちらに走ってこようとしていたカラちゃんとスーちゃんが、ぴたりと止まったのだ。かと思うと、体からまばゆい光を放ち始める。
それは今までカラちゃんが放っていた光の、何倍も何倍もまぶしかった。
「うわっ! なになに!? どうしちゃったのふたりとも!」
『ほう……?』
わたしがまぶしさに顔を隠す中、ファブニールさんは興味深そうにふたりを凝視している。それから——。
『おや、おめでとう! どうやらふたりとも、進化したようだぞ?』
「へっ?」
その言葉に、わたしはあわてて目を開けた。
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