第23話b:夢のあと




 謝恩パーティーでは、アメリアとアルフィーの婚約が発表され、アルフィーが正式に王太子になる事も併せて発表された。


 逆にフーリーは、本日より王族籍を抜け、2ヶ月後にアンダーソン子爵家に婿入りする事が発表された。


 ミア・アンダーソン子爵が、アンダーソン公爵とは親戚では有るが公爵家が後見でも何でも無い事も周知され、学園で公爵令嬢として振る舞っていたミアは、友人も失った。



 パーティー後、ミアとフーリーは王家の馬車でアンダーソン子爵邸へと送られた。

 一人の男性が迎えに出て、二人を邸内へと案内する。

 ファミリーリビングへ入ると、ミアが住んで居た頃と同じ家具が変わらず配置されていた。


 公爵家で2年半暮らしたせいか、元々のランクが違うせいか、室内がとてもみすぼらしく見えた。

「何だここは。早くリビングへ案内しろ」

 フーリーに至っては、ここがリビングだと気付いていない。


 男性はフーリーを無視し、ミアに話し掛ける。

「1ヶ月は、私と三人のメイドが公爵家より派遣されます。その間に、ご自分達で覚えるか、新しいメイドの手配をしてください」

「あの、そのままうちで働いてください!」

 優しい雰囲気の男性に、ミアは笑顔で言う。


「は?」

 男性の顔から表情が抜け落ちた。

「公爵家に雇われている今の立場を捨てて、たかが子爵家で働けと?」

 冷たく言い捨てられ、ミアは青くなる。

 しかしフーリーは逆に顔を赤くした。

「使用人のくせに、何だその口の効き方は!」

 怒鳴りつけるフーリーを、男性は更に冷たい目で見つめる。


「これでも私は伯爵位をたまわっております。貴方は現在、子爵の婚約者である平民ですよね?今ここで、私に不敬を理由に切られても、文句を言えない立場だと理解していますか?」

 どこまでが本気か判らない男性に、ミアもフーリーも口をつぐんだ。



 二人は、現実を自覚した。

 やっと夢から醒めたのだった。



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