異世界式アイドル育成プラン ~スキルは使ってこそのもの~

ぺらしま

第1話 長い長い道と神

 「ここはどこなんだろう」


気づいたら一人だった。

見上げると星空が広がる、なんて幻想的な光景だろう。

そして横を見ても星空、うん、綺麗だ。

下を見ても星空。

どこを見ても星、星、星。


もしかしたらプラネタリウム的な場所なのかな?

きっとそうだ、宇宙服みたいなものを着てないのに息をしているし、そしてなぜかわからないけど歩いて進んでいる。

でも、出口も座る席もない。

たぶん宇宙、それか全然違う世界、なんだとおもう。

こんな自問自答を何度繰り返したか。


「ふぅ、疲れた」


そう、体感だともう何時間過ごしているのかわからないぐらい、私はここで過ごしている。

独り言はあえて口に出している、最初は黙々と考えたり歩いたりしていたけど変わらないのであればちゃんと声を出して、話していると自覚する、私がちゃんと意識を保つために。


お腹も減らないし、喉も乾いてない、歩き続けても疲れているような気がするだけ。

そんな不思議空間、きっと私は死んでるんだろうな。

それにしてもなんで死んだんだろう。


そして暫くして私はここにきてまだやっていないことをやってみる。

大きく息を吸い、お腹に力を入れる。


「おーい!だーれかー!いーませーんかー!」


大声を出して叫ぶ、これは最終手段にしていた。

誰も来なかったり、返答がなかった時に頭がおかしくなってしまうかもしれないから。

案の定、返答もないし、木霊しもしない、やっぱりね。

オーケー、オーケー、わかってた、わかってたわ。

ふぅ。

意識を保て、私。


「ようやく呼んでくれたね、待ってたよ」


大声もダメじゃん、と思ったら声をかけられた。

ふぁ!と声に出ない声で驚いた私は後ろを振り返ろうとする。

いやいや、後ろから男性の声が聞こえたんだもの、当然振り返るわ。

転生ものが大好きな私はここにきて何度も妄想した、女性の声なら美人かかわいい女神、男の声ならイケメン神、ここは天界、きっとそうに決まってる。

目を輝かせてゆっくりと振り返るとそこには光り輝く超絶イケ…


「もえもえきゅん」

「ごはっ」


振り返るとそこには小太りのゴブリンが全力のヲタク装備でペンライトを振り回していた。

そうして私は死んだ。


「いやいや、死んでないし、というかもう死んでるし」

「ほら、やっぱり死んでるんじゃない。そもそもあんた誰よ」


ヲタ芸のゴブリンはフィニッシュまで踊り終わると息切れしたまま、語りだした。


「ぶふぁ、はぁ、わたしはぁはぁ、このせかはぁぁ、ぶふぁ、のぉぉ、ふぅぅ」

「もういいdeath」


私は再度前を向き、歩き出す。


「早く神様来てくれないかな、超絶イケメンの」

「ちょまああぁぁぁっ!」


そういうとゴブリンは見た目とは裏腹な神速な動きで私の前に移動した。


「ちょまって、はぁふぅ」


手のひらというかペンライトを全部の指に挟んでいるからでかい手みたいに見えるし、ピカピカしてるそれを私に向けて息を整えるフルヲタ装備のゴブリン、そんなゴブリンに静止させられる宇宙空間の私。


「ふぅ、落ち着いた」


約5分、高いカップラーメンが食べられるなぁ。


「で、誰なのよ、あんた」

「よくぞ聞いてくれた」


ゴブリンはそう言うと一度背を向き、気合を入れた。

すると白マントが突如現れた、ってマントの中心に萌の文字、うわぁ。

私がげんなりしていると、元気よくゴブリンは振り返り、準備万端の顔を見せる。

ゴブリンはそのまま少し浮くと、どこからか後光が射し、本体も光り出すと神々しいオーラを身に纏った。


「僕はこの星の五神が一神、ヲルマ・タレイア・クレネティブ、まぎれもない神である」

「かっこいい感じ出してるけどフルヲタ装備のままで光り輝いてもごっちゃになっててこっちの目が痛いし、名前の頭文字がヲタクじゃないの。ヲタクって呼ぶわ」

「ま、まぁ、それでいいけど、驚かないのもすごいね。」

「もちろん驚いてるわ、ただ驚きより、悲しみの感情が強いのよ、人間は色々な感情があるけど一気に色んな感情は出ないわ、むしろ無になる」


私はそう言うと目の前のゴブリンを見据え、腕を組んで問う。


「それで、私をどんな世界に転生させてくれるのよ」


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