第20話

 赤星がTVをつけると九州で行われているマラソン大会の中継がやっていた。

 何気に見ていた赤星はふと月島に言った言葉を思い出し持っているスマホで月島の名前を検索するといくつかヒットする項目があった。検索サイトには、

『月島陽、万引きで逮捕』

『オリンピック出場権剥奪』

 という見出しの新聞社やTVのニュース番組のサイトばかりだった。

 それだけでなく、監督だった木戸のパワハラ疑惑に関する項目もあった。

 何処かで月島の事を聞いたと思ったらこのニュースだったと赤星は思い出した。

 そこへ月島が通りかかると

「月島」

「あ、赤星さん」

「昨日はごめん!変な事聞いて!お前が結構辛かったの知らなかったんだよ!」

「いいんです。あの時自分はダメだからこうしなきゃって馬鹿みたいに必死になってましたから」

「よくねーよ!オリンピック行けるやつなんてほんの一握りなんだぞ!そんな事言うな!」

 赤星は立ち上がり両手を月島の両肩に置き、ぶんぶん揺さぶった。

「何何?」

「どうしたんすか?」

 赤星の声に気づいた蟹川と薬師丸が様子を見に来た。

「いいんです。あの時の自分が甘かったし、監督の言う事聞いてればよかったんですよ」

「その監督はお前にパワハラしてたんだろ!」

 赤星は怒鳴った。

 赤星の怒声で他のメンバーが飛んできた。

「赤星!その辺にしろ!」

「新さん、もう止めて!月島君が可哀想」

 島や小夜が止めるが赤星は止めなかった。

 赤星は他のメンバーを見ると

「オリンピックに行けるやつは一握りしかいないのにコイツはそれをどうでもいいように言うんだよ!」

「オリンピック?」

 紅が疑問に思うと長曾我部が赤星を月島から引き剥がし

「オリンピックだかなんだかわからないけど、月島君は8人のスターの大事な仲間なんだよ」

「そうですけど…」

「君達、何やってるんだ?」

 桜田が聞くと

「赤星君が月島君にオリンピックがどうって怒っていて…」

 長曾我部が説明すると

「月島君、君またマラソンがやりたくなったのか?」

 桜田が質問すると月島はそっけなく

「いいえ。やりたくありません。大会も出たくないですし」

「月島君、嘘つかなくてもいいんだよ。正直に話してほしい」

 暫く沈黙が続いたが、小夜が

「月島君、今気づいたんだけど、月島君って男子マラソンの選手だったの?」

「そうですよ。かなり昔ですけど」

「自分も思い出しましたけど、かなりってほんの1年か2年前じゃないっすか?」

 薬師丸が言うと

「別にいいじゃん。薬師丸君」

「まあまあ」

 長曾我部が宥めた。

「その事なんだけど、さっき警視庁から連絡があった。月島君、君にはかなり辛い事実かもしれないが話していい?」

 桜田にそう聞かれ、月島は頷いた。

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