第14話 我が輩はネコであるって話
自室の扉を閉め、ベッドに寝転がるとコースケは天井を見上げる。
大人2人が話す声は普段この家に住む者からすると騒音になっていた。
「何なんだよ、全員わけわかんねぇよ」
悪態をつくと枕を壁に投げ、そのまま腕で顔を隠す。
無意識に左耳のピアスを触る癖は幼少期から治っていない。
コースケはピアスに触っていることに気が付くとピアスから手を放し、そのまま枕を拾い上げ、ベッドにうつ伏せになる。
「そんなに転生者って多いのかな」
カノの発言を聞いての感想だ。
ふと考えると宗教でも何でも転生という言葉があるんだからきっと誰かがいたんだろう、転生者本人か、知り合いか、妄想としてでも転生者としての話をする人が。
ただ、現代に当てはめると頭がおかしいかネタと捉える風潮にはある。
「これは、ほんと仲間外れ感がすごいって」
刑事からも、好意を持っていた学友からも転生者の話が出た、父も何かを知っている風だし。
自分が生まれつき特殊なのはわかっていたが、それを超える特殊な状況になっていることに改めて気づいてしまったが故に精神的にショックを受けてしまった。
ベッドからチラリと机に視線を向けると写真が見えた。
髭のない若い父が母を後ろから抱きしめ、母が赤ん坊を抱き締めている。
母親はコースケが生まれて半年で亡くなったと聞いているから、これが最初で最後の家族写真だ。
「相変わらずいい笑顔してるなぁ」
物心ついてから変わらないこの母の笑顔を見る度にいつも癒されてきた。
父か母のどちらかしか親がいない子供は周りにもいたからそれが原因での虐めやどうこうと言うことはなかったが、逆に写真があり、幸せそうに微笑む母を見る度に胸が締め付けられた。
そして自分が普通とは違う力を持ち、それを隠しつつ生活するのは子供にとってはとても苦痛だったのだ。
自分が生まれたから母が死んだのでは、この特殊な力があったから母が死んだのでは、泣きながら父に話をしたことがあった。
その時に父から言われたのだ、その力は神様になった母から授かったものだと。
コースケはその言葉を信じた、そして今でも信じている。
そんなことを考えているとふと思いついたことがあった。
「この力をちゃんと使おうとしたのって、今回が初めてかもな」
今でも覚えている、3~4歳ぐらいだ、この力が現れたのは。
最初は色々な声が聞こえるのが楽しかったが悪意、善意問わず、大きい声や小さい声、全てが聞こえてしまう。
それが原因なのか、高熱を出して、昏睡状態になりもした。
父は、意識を取り戻した俺に母の想いが込められたものとしてピアスをくれた。
3歳の子共に何てものを、と思うけど今思い返せば周りの子たちも金髪だったり、ピアスを開けていたりと色々思い出すので違和感はなかった。
そしてそのピアスを付けてからピタリと声は聴こえなくなった。
だからこそ、母を信じている。俺を救ってくれたから。
まぁ、親父はあんなだし、色々隠してるからアレだけど、それでも信じてる、唯一の家族だ。
そして今でもこのピアスはずっとつけっぱなし、勿論掃除はしてるけど。
母親の優しい笑顔を見たコースケは改めて、意識を持ってピアスを触る。
「俺は俺、誰かを助ける為にこの力をようやく使えるんだ、ヒーローになるぜ、母さん」
そう呟いて再度、リビングへ向かう。
3人が写る写真、母親の左耳に付いている黒いピアスがきらりと光った。
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