おやすみのキス

だんぼーる

第1話 おやすみのキス

 この物語に俺の名前、容姿なんてものはどうでもいい。好きに想像してくれ。


 大事なのは、俺にどんな人でも奴隷として扱える能力があること。そして、その能力を行使する為には条件があることだ。


 ここでいう奴隷の定義とは、"俺が命令をした相手はなんでも言うことを聞いてくれる"というものだ。例えばあ〜ん♡なことからこ〜ん♡な事まで命令できる。年頃の男子には垂涎すいぜんの代物だろう。

 実際、年頃の俺は興味津々だが、まだこの能力を手に入れたばかりで能力を使用した事が無く、童貞であるのはここだけの秘密だ。

 

 ただ、忘れてはいけないのが先程も言った通りこの能力にはちょっとした条件がある。


 それは、『意識の無い相手にキスをする事』だ。それもほっぺにそっとなんて可愛いものじゃない。意識の無い相手に唇と唇を合わす以外に条件は満たせない。


 ちなみに意識の無い...とは、何もぶん殴って気絶させると言う訳では無い。まぁ、それでも条件を満たす事は可能なのだろうが道徳上の観点からあまりよろしいとは言えない。


 要するに何が言いたいのかというと、寝込みを襲えばいいのだ。


 大分問題発言をしている自覚はあるが、今更戻る事など出来ない。...童貞だけに


 この状態に相手を持っていくには主に2つの戦法がある。


 一つ。睡眠薬を混入させ飲ませる。


 道徳上の観点?クソくらえだ。これが一番効率が良いが、その分リスクが付いてしまう。言い忘れていたが人を奴隷として扱える最大容量は一人までで、次新たに奴隷を作ろうとすると、奴隷を解放しないといけない。奴隷解放後は奴隷中の記憶は消えるが、奴隷以前の記憶は鮮明に蘇る。

 つまるところ、俺が怪しげな飲み物でも差し出したら確実に疑われる。更に長時間飼ってしまうと、その分第三者にバレる可能性が高まり、奴隷として飼っていた人はタイムスリップに陥ったように錯覚するだろう。


 これらの点から大変リスクが高く、もう一つの策が俺の本命だ。


 そのもう一つというのが相手の好感度を上げて自分の家に呼び、睡眠薬を混入した飲み物を出すという最強戦術だ。


 結局睡眠薬じゃねーか!とツッコまれそうだが、先程の作戦とは雲泥の差だ。


 自宅という事で何をしても一人暮らしなのでバレないし仲良くなっているので何時間か記憶が抜けたぐらいじゃ俺を疑わない...はず。


 いやいや、好感度を上げて家に呼んでいる時点でそういうことできるだろと思った人。甘い、実に甘い。


 女の子を家に呼ぶだけで神経すり減らしてそうな俺が、簡単にエッチの誘いを出来るとでも?童貞だぜ?それに好感度を上げに上げてから奴隷にして堕とす。この背徳感を気の済むまで味わってみたい。これが俺の夢であり願いだ。


 ただ、先程もチラっと述べた様にこの能力にはリスクがある。


 それはこの能力を知られたら終わりな事だ。この能力のことがバレたら、二度と奴隷を作ることなど出来なくなってしまうだろう。下手すりゃムショ行きだ。もしバレた時、そいつを口封じに奴隷にしてもいつか解放しないと、上限一名の為この能力が死んでしまうし、奴隷にさせる難易度が自分を警戒している相手かそうでないかだと天地の差だ。殴って気絶させるしかない。そもそも二人以上にバレたら能力でどうこうできる問題でも無くなってしまう。


 それでも俺には、そんなリスクを負ってでも、堕としたくて仕方が無い少女が二人いる。


 一人は同じクラスの......あ、言い忘れていたが俺は高校二年生だ。話を元に戻す。

 一人は同じクラスの久礼くれい由乃ゆのさんだ。背中辺りまで伸ばされた煌めく金髪のストレートヘアーに心の奥まで見透かされそうな赤眼。それに、透き通る様な白い肌、フランス人形のように整った目鼻立ちとアイドルの様な可愛さ。いや、アイドルを超越している。身長は高2男子平均より5cmぐらい高い俺より15cm〜20cm程低くて、学年で一番可愛く、頭が良い。つまり才色兼備である。付け足すと誰にでも優しく言葉遣いも丁寧でクラスでも人気者だ。

 ここまで属性を盛られたら流石にわかるだろう。あぁ、一生奴隷にしたいよぉぉん。ゆのちゅぁぁぁん。


 おっとすまない。取り乱した。もう一人の紹介だ。

 

 またもや同じクラスの柏倉かしくら詩乃しのさんだ。久礼さんよりも長い白髪に編み込みもされていてお姫様のような可愛さだ。いや、お姫様を凌駕している。それに、宝石の様な碧眼に加え、あどけなさのある優しい目鼻立ちに、久礼さんより5〜10cm程低い背と、その圧倒的なルックスは全男子を虜にした。先程も言った様な気がするが、学年で一番可愛い。ただ、あまり人と話すのは見た事が無く、一人で本を読んでいる姿をよく見かける。その全身透明感で溢れた彼女に見える儚さに俺の庇護欲は掻き立てられた。

 しのちゃぁぁぁん!俺が一生守ってあげるからねぇぇ!あとアン◯カさぁん!!彼女の白髪は200色の中で一番綺麗ですよー!!


 ...また取り乱してしまった。申し訳ない。


 ただ一つ、奴隷にするにあたって問題がある。それは彼女らはめちゃくちゃガードが硬いのだ。一体何人何十人何百人の男が彼女達に告白しただろうか。だが未だに付き合ったとか、男と帰ったところを見たとかそういうのを聞いた事が無い。まぁ上手く隠しているのかもしれないが。それでも彼女らを奴隷にするには気絶させるしか...いや、それはダメだ。友達ゼロの俺だがどうやって好感度を上げればいいのか......そしてどうやって彼女らを奴隷にするのか。


 叶うならば二人とも俺の奴隷にしたい。彼女達の可愛さはそれぞれベクトルが違う。両方一番だ。だが残念ながら俺の能力で奴隷にできるのは一人だけ。それも条件付き。



 そして俺は思いついた。


.....両方に猛アタックを仕掛けて、先に俺の前で寝てしまった子を奴隷にしたらいいんじゃないか?


 この作戦名は...そうだな。名付けて、


 『おやすみのキス』作戦だ!!

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