第7話
「えーっと……まずは英単語100個と小論文と……あ、昨日の間違い直しも終わってなかったんだっけ……」
優は勉強に追われていた。勉強をしていないと落ち着かなかった。
『この調子で頑張れば第一志望校合格も夢じゃないでしょう』
優は夏休み前の三者面談で先生に成績が伸びていると褒められた。
『良かった〜。優はやれば出来る子なんです』
お母さんも喜んでいた。第一志望校の判定はBだった。
毎日毎日本当に頑張って勉強をしてDからBまで上げたのだ。
それはそれは本当に嬉しくて絶対に合格してやると優は改めて心に誓った。
それからも優は予備校の自習室に毎日通い、コツコツ勉強を続けた。
しかし、1週間前に返ってきた模試の判定はDだった。
「なんで……? なんで2個も下がってるの……!?」
更に予備校のクラスが1つ下のクラスに変更されていた。
優は声がでないほど打ちのめされた。
自分よりも成績が良くないと思っていた人が自分よりも良い成績を出して喜んでいる様子が優の目に飛び込んでくる。
今まで私がしてきた努力は一体何だったの……!?
友達も先生も親も兄弟も『成績が下がった可愛そうな子』という軽蔑した目で自分を見ているように感じて怖くなった。
私よりも頭がいい人に優しくされると自分でもよくわからない怒りと悲しみで心が爆発する。
解けない問題に遭遇するだけで泣きそうになるくらい焦ってしまう。
――辛い。
「ねぇ、お母さん。予備校やめたい」
「そう。じゃぁ電話で伝えとくね」
お母さんは私に何も聞かなかった。
理由を聞かれても困るけど何も聞かないのは私にもう期待してないということなのだろうか。
「あぁ、そんな事考えてる暇じゃない。勉強に集中しないと……」
capable 力がある reveal 〜を明らかにする display 〜を展示する……
成績が落ちてからいくら勉強をしても勉強している実感が湧いてこない。
問題を解こうとすると脳に考えることを拒否されてしまう。
全然勉強が進まない。
私には時間が無いのに……なんでちゃんと勉強できないの……!?
今日中に英単語と小論文と間違い直しと数学の確認テストと古典のワークを進めないと間に合わない。もっとみんなに置いていかれてしまう。
優は心の中を掻きむしられるような激しい焦燥感に支配されていた。
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