離島の龍ガール

泉野帳

導入

 少女にとっての一日は、太陽が昇っている間だけ。

 明け方とともに目を醒まし、夕陽が地平線に沈むと眠る。


 少女は夜を知らない。

 寝静まった夜の静けさも、夜空を織りなす星の輝きも、彼女は見たことがなかった。


 少女にとって夜のない生活は当たり前だった。太陽の中で、すくすくと育った彼女の名前は千夏ちなつ。千の夏ほどのきらめきを持った人になって欲しいという願いが込められている。

 友人や家族が話す『夜』への羨望はあるが、さほど不便を感じていなかった。

 夜に観られない番組は録画すればいい。夜にできないことは昼のうちにやってしまう。夜は眠ることが大半だ。周りに置いていかれることは早々ない。

夜がくると彼女の意識は何かのスイッチが切れるように、なくなってしまう。島の病院も、本土の病院でも意識障害の原因は不明。身体は至って健康体なのに、夜になると起きることができない。

何も不自由のない生活はできていて、家族にも、友達にも、幼馴染にも恵まれている。


 それでも。 

 神様。願うことならば、満天の星空をこの目で拝みたいです。

 昼の世界に閉じ込められた彼女は、人知れず神に願った。

 

 そして、月日は流れ、彼女が一三歳になる誕生日に、運命の出会いが訪れる。

 彼女が住む島。龍がむといわれる離島に、東京から二人の大学生が訪れた。彼らと、一つのペンダントが、大きな騒ぎを巻き起こす―――

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