第4話 お前らって本当に似てるな

 「ほら、ご飯できたから皆んなさっさと座りなさーい」


 今日は休日にしては珍しく全員がまともな時間に起きていた。普段なら誰かしら(主な俺が和葉が)いないことが多いのだが・・・


 結局俺と和葉はあの後家に帰るとすでに食事を済ませたという双葉に説教を喰らってしまった。終わり際に俺が顔に米粒がついている事を指摘すると何故か俺だけ説教が10分延長された。解せない。しかしそれ以降は普通に暮らしていた。


「あっ、カナタ君♪そこの席座ってもいいかな?」


「おう、別にいいぞ」


「やったーそれじゃ遠慮なく」


 すると和葉はおれの太ももの上に俺と向き合うようにして座った。


「なっ!?お前っ座るって隣の席じゃなくてここかよ!?」


「えー?私最初からそこに座るなんて一言もいってないんだけどなあ、あっもしかしてドキドキしたっ?ねえ今ドキドキしてる?」


「なっ!?おまっ・・・」


「わー!和葉すごい大胆!」


「かっ和葉!?また朝から一体何やってんのよこの変態!?」


 どうやら他の2人がこの事態に気付いたようだった。すると和葉は バレちゃったかー と言うとあっさりと俺から降りた。というように和葉の俺に対する距離が妙に近くなった気がする。俺はもっと自分を出していいって意味で言ったんだが・・・


 そんなこんなで朝食を食べている途中、俺は改めて思った事を口にする


「お前らって本当に似てるな」


 すると3人はキョトンとした表情をしたが、溜息を吐いた後双葉が答える。


「あったりまえでしょ三つ子なんだから!それとも何よ、もしかして誰が誰だか分からなくなったわけ?」


「そういうわけじゃねぇよ、今こそそれぞれ違う髪型だから分かりやすいけど昔はそうじゃなかっただろ?強いて髪留めが違ったくらいで・・・」


 そうだ、コイツらは今こそ三葉はスポーティなショート、双葉が腰まで届かんばかりのロング、そして和葉がその中間といった分かりやすい髪型をしていたが、昔はそうではなかったのだ。すると和葉が懐かしそうに答える。


「ああそうだったねぇ、あの頃よく私は誰でしょうかって言って皆んなを困らせてたっけ」


「てか、あんた今遠回しに未だに髪型が一緒だと分からないって言ったわよね」


「い、いやそんな事は・・・」


「えー!そうなんですかカナタ君!?」


 ピコーン「あっ!そうだ!ねえ、和葉!双葉!ちょっとこっち来て!」


 コショコショコショコショ


「ふーん、それはなんとも」


「面白そうだね♪」


 すると3人はコソコソと部屋を出ていった。一体何を考えているんだろうか、不安で仕方がない。


 俺が1人しばらく待っていると部屋の扉が開いた。するとそこにいたのは・・・


「ブッ!?な、何してんだお前ら!?」


 何故かハゲのカツラを被っていた3人だった。すると右にいるハゲが一枚の紙を渡してきた。


(私たち3人の内、誰が誰だか当ててみてね、もし当てられなかったら今日の晩ご飯はカナタの奢りだから気をつけてね)


「はっ!?なんだよそれ、俺がやる理由ねぇじゃねえかよ!」


 すると真ん中のハゲがさっきと同様に紙を渡してきた。


(ルールとしては、基本的には見るだけ、何かさせたり喋らせたりは禁止)


 ルールがどうとか関係なく俺は得がないからやりたくないんだけどな・・・そう思っているのを悟ってか左のハゲが紙を渡してきた。


(ちなみに全員を無事に当てれたら一週間当番免除だから頑張ってね)


 なるほど、それは実に魅力的だ。俄然やる気になってきたな、よし!


「いっちょやってやりますか!」


 とは言ったものの誰がだれなんだろうか、と言いたいところだが実は1人すでに目星がついている奴がいる。それはズバリ右の奴が双葉という事だ。

 理由としては紙の渡し方だ。双葉はものを渡す時に人差し指と中指で挟んで渡すという癖がある。現にさっきも真ん中と左の2人が親指と人差し指で挟んで渡したのに対して右の奴だけは人差し指と中指で渡していた。

 すると後は和葉と三葉の2人だが・・・分からん。とりあえず真ん中の奴の顔を覗き込む。


「少し、よく見させてもらうぞ」


「ッ〜〜〜〜〜〜〜!?」プイッ


 こいつ、顔を背けやがった。ていうか顔が少し赤くなってたような。分からん、次を見よう。


「次はお前だ」

(キラキラキラキラ)


 あっ、絶対こいつが三葉だワクワクの感情が顔全体から滲み出ている。こいつやっぱりアホ、いやガキだな。


 となると残りの真ん中が和葉か、分かったし早速答え合わせするか。


「よーし、分かったから答えを言ってもいいか?」


 すると3人は同時に首を縦に振った。


「まずは右のお前だがズバリ双葉だろ!?1人だけ紙を渡すときに人差し指と中指で挟んでいたからな、これは双葉にしかない癖だ。」


「次に左のお前は三葉だろ?1人だけワクワクオーラが顔全体から溢れてたぞ」


 するとソイツは明らかに驚いた顔をした。こういう単純な行動、やはりこいつが三葉で確定だな。


「そしてお前が和葉だな。理由は・・・すまない正直言って消去法だ」


 ひとしきり聞き終えると3人は同時にカツラを外した、すると意外にも当たっていたのは三葉だけだった。


「なっ!?そんな馬鹿な・・・」


「にしし、まんまと私のブラフに騙されたようだね♪」


「消去法で間違えられるとか最悪なんですけど」


 くそっ!まんまと騙されちまった、流石は和葉だ。妹たちの癖も理解済みか・・・


「私のこと当ててもらえて嬉しいです!カナタ君!」


「お前は少し分かりやすすぎだ、少しはポーカーフェイスの練習をしろ」


「えー?私そんなにわかりやすかったですかねー?」


 ここで俺は一つ気になった事を質問する。


「そういえば双葉」


「何よ?言い訳は聞かないわよ」


「いや、そうじゃなくて何で俺が顔を覗き込んだ時に顔を背けたんだ?」


「えっ!?あっ、あのっ、それは・・・」


「そういえば顔も赤くなってたよな?大丈夫なのか?なんか体調とか悪いとかか?」


「ッ〜〜〜〜うるさーーい!!」


 その後俺は軽く数時間は双葉に怒られた。ついでに俺の所持金も3人の食費に消えてしまった、やっぱり受けるんじゃなかった・・・





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る