第19話 ギルドと勇者

「良いですか、皆さん一緒に、イクミさんは綺麗、マトイちゃんは可愛い」


「「「「「「「「「「イクミさんは綺麗、マトイちゃんは可愛い」」」」」」」」」」


今、冒険者ギルドでは、これを徹底させる為に手の空いた冒険者たちに復唱させている。


勿論、受付の顔である私ミランダも一緒に復唱している。


「なぁ、これ必要なのか? 此処にいる冒険者は皆、週二回の食べ放題、飲み放題の恩恵に預かっているんだぜ、聖夜さんがあの二人を好きなのは解っているから、誰も何もしない、いや困っていたら寧ろ助けるだろう」


「それは解っていますが、領主様からの依頼なのですからやるしかありませんよ。これを徹底して下さい」



「ふぇ、領主様からの依頼な訳」


「はい、領主様はS級冒険者の聖夜様にこの街に居ついて欲しいのです。その為には聖夜様に過ごしやすいようにして欲しいという依頼です」


「成程、理由は解りませんが、聖夜様はあの二人にべったりですからね」


「確かに、貴公子と呼ばれた聖夜様が何故か、そこだけ壊れてしまっているからね」


「その気になればハーレムすら楽勝なのに残念だよね」



「そういう事は言うんじゃねーよ! 絶対にな」


「「「「「ギルマス」」」」」


「壊れて居ねーよ、2人は美女とまではいわねーが、普通の少女だ、それを忘れるな…これは商業ギルドと他のギルドを含んでの対応だ、よそから来た人間は仕方ねーが、それでも極力悪口は言わせないようにしろよ」


「そこ迄しなくてはならないのですか」


「あのよ~週に何回もワイバーンを含む大物を納めてくれるんだ、聖夜1人でこのギルドの底上げがされているんだぜ。しかも週二回食べ放題、飲み放題の代金を払ってくれるからな、駆け出し冒険者や低級冒険者は凄く助かっているんじゃねーかな。田舎から出てきた奴や体を壊した奴が、必ず週に二回はたらふく食って飲めるんだぜ。俺としてもそちらも感謝だ」


「確かに助かっているな」


「僕も自分じゃあんな料理の代金払えないもん」


「私もよ」


「そうだろ、そうだろう?だから聖夜に離れて貰っちゃ困るんだ。それでな、ここからが問題なんだ。勇者ガイアがよう、自分から追放した癖にまたパーティに誘っていやがるんだ」



「あの幼馴染ハーレムパーティのいかれた勇者か…聖夜を傷つけた癖にまだ居るのか?」


「オークマン、相手は勇者だ言葉は選べよ」


「ああっ、だがよ」


「俺だって気持ちは同じだ、直接見たわけじゃないが、大方ハーレムにでもしたくて聖夜を理由も無く追い出したんだろうな。ここでの活躍をみれば彼奴が凄いのは解かる。そしてあの性格だ、絶対に落ち度なんかねーよ」


「だけど、それじゃなんで聖夜さん取り戻そうとしているのかな?」


「大方惜しいと思っちゃんじゃねーのか…聖夜は家事も完璧みたいだし、まぁ解らないが…兎も角、勇者が狙っているのは確かだ、悪いが此方も目を話さず気にかけてくれ!何かあったらギルドまで連絡くれ」


「「「「「解りました」」」」」


◆◆◆


「早く、聖夜を口説かないと不味いだろうが…この際仕方ない、誰か色仕掛けでもして来いよ」


「ガイア、それで良いのか? 冗談でも言って良い事と悪い事があるぞ」


「あのさぁ、ガイアはそれで良いの?」


「愛しているって言ったのに、それ? 信じられない」


そうは言うが、彼奴が居ない事には旅は続けられない。


それに悔しいが彼奴の実力は最早、俺すら凌いでいる。


ギルドで聞いた話では1日でワイバーンを今では8羽狩っているそうだ。


しかも週2回。


これは勇者として有名な北の勇者と言われるカイゼルに匹敵する。


勇者で無いのに此処までの奴は絶対いない。


何故、そこ迄急に化けたのか解らない。


だが、パーティから抜けた時から彼奴は更に強くなった。


今の俺にはこいつ等より聖夜の方が欲しい。


勇者として魔王を倒せば、金も名誉も女もついてくる。


「仕方ないだろう…俺だって辛いんだ。だが、彼奴は壊れてしまったんだ。もし彼奴が正常に戻るとしたらお前達しかないだろう? 異常になる前に拘っていたのは皆なんだからな」


「確かにそうだな…だが私は色仕掛けは好かない」


「ハァ~ それじゃ私がやるしか無いのか」


「あのさぁ~放って置いてあげるという選択は無いのかな」


「ミルダ、それは駄目だ」


「確かに壊れているのかも知れない。だけど聖夜凄く幸せそうだったよ。あのまま放って置いてあげた方が良いんじゃないかな」


「ミルダ、それじゃ困るから戻ってきたんだろう」


「そうだけどさぁ…私達勝手過ぎるよ」


「まぁな、だが聖夜が必要なんだ。私は戻ってきてくれるなら土下座でもなんでもするつもりだ、だが放って置く事は出来ない」


「そうねランゼの言う通りね、許してくれるなら私も同じ、なんでもするわ」


「ガイアも同じなの?」


「そうだな、土下座位はするし、最悪お前達が欲しいって言うなら、お前達次第だが聖夜と付き合って欲しい全部俺が悪かったんだ」


今の彼奴なら魔王討伐も夢じゃない。


魔王を討伐した勇者なら貴族の娘、場合によっては第三王女でも手が届くかも知れない。


なら、こいつ等を全部渡しても問題無い。


今はどんな犠牲を払っても彼奴が必要だ。


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