第14話 オークマンと奴隷商にて

「よう!」


「態々、本当に悪いな」


「良いって事よ!どうせついでだよ、ついで」


そうは言っても決して『ついで』ではないのが解かる。


オークマンには9人の妻が居る。


オークマンの目標は10人の妻だ…つまり多分次に求める奴隷が最後の奴隷になる。


そう考えたら厳選して選びたいだろうし、9人も居るから急いで探す必要もないだろう。


一人で寂しそうなイクミと、奴隷探しの初心者の僕の為に時間を割いてくれたのは言われなくても解かる。


「それじゃ、そういう事にして置くよ。だが他にも世話になっているから、今度家族全員に飯でも奢らせて貰うよ」


「そんな気にする程の事でもねーよ」


「そうはいかないさぁ、他にも世話になっているからね」


「相変わらず聖夜は固いな…あのよ、ただ飯ならもう奢って貰っているから要らないな、週二回、食べ放題に飲み放題やってるじゃないか? 何時もあれを家族で利用させて貰っているからな…借りとか言い出したらこっちの方が多いんだぜ」


「そう言う事なら甘えさせて貰うよ」


長い時間一緒に過ごしてきた幼馴染より、オークマンの方が一緒に居て楽しいと思うのは何故だろう。


多分、此方が一方的に何かをさせられるのでなく、やってあげた分はしっかり返してくれるから気持ちが良いからだ。


別にお返しが欲しい訳じゃない。


だが…やはり人だから…キャッチボール出来る関係の方が楽しいと感じてしまうのは仕方ないだろう。


「着いたぞ、此処が、俺のお勧めの奴隷商だ」


他の奴隷商に比べて規模は小さい。


店自体も少しくすんだ感じがして何だか拍子抜けした。


「随分、小さ目のお店だな」


「まぁな、だけどこういうお店の方がきっと聖夜好みの奴隷が居る筈だ。俺には解る。多分聖夜が欲しいのは『愛の筈』だ」


目をキラキラさせたオークマンに引っ張られるようにお店に入った。


「いらっしゃいませ、オークマン様、おや今日はお連れの方が居るのですね」


「がははははっ今日は俺より此奴がメインだ。最も見させて貰うだけで終わるかも知れないが」


「構いません! オークマン様が居るなら説明は不要ですか?」


「まぁ、俺から話すから良いぞ」


「それじゃ、そうさせて頂きます。購入が決まったらお呼びください。それではじっくりとご見学下さいませ」


「まぁ、自由に見れば良いんだ、此処に聖夜が買えない奴隷は無いからな、聞きたい事があったら何時でも声を掛けてくれれば良い」


そう言われたので、適当に見て回った。


エルフもダークエルフも確かにいる。


もし、イクミに出会う前ならきっと感動したかも知れない。


確かに美女だが、それだけだ。


確かに長命なのかも知れないが金貨200枚は流石に驚く。


人族の奴隷も確かに居るがパッとしない。


オークマンは人族の奴隷の檻がある場所から動かない。


実はオークマンの奴隷にはエルフ等、亜人はいない。


不幸な人族を引き取り幸せにする男。


それがオークマンだからだ。


多分、此処に居る奴隷は、ぱっとこそしないがそこそこ質が良く外見も良いからきっと僕が買わなくても誰かが買うと思う。


なら、無理して買う必要は無い。


周りを見ていると奥にカーテンがあった。


「オークマン、このカーテンの敷居から先にも奴隷は居そうだけど、なんでカーテンに仕切られているんだ」


「ああっ、そこから先は、廃棄奴隷や鉱山送りの奴隷がいる場所だ、金額は物凄く安いが…見るなら覚悟した方が良いぞ…俺はもう見ないようにしているんだよ…惨いからな、特に毛布が被せてあるのは廃棄奴隷、見たら後悔するぞ」


そう言えばイクミは銀貨3枚だった。


案外、こう言う場所に凄い奴隷が居たりしてな…


そう思いカーテンをめくり中に入ると…


黒髪、黒目の女性が、戦メイドシエスタが…居る訳がない、あれはストーンヤツザンの架空の話だ。


そんな事は無い。


今は殆どの檻には誰も居ないようだ。


檻を1つ1つ見ていくと毛布が被さっている檻があった。


多分これが廃棄奴隷だな。


毛布を上に上げて中を覗いた。


髪の毛の色が青と紺の中間位のロング


目がイクミみたいに大きい。


あれっ…まただ。


イクミみたいな子はもう他には居ないと思っていたけど…いた。


但し、イクミとは逆だ。


頭がやや大きく体は4等身? どう見ても5等身はない。


デブではないが異常に胸が大きい。


目のやり場に困る位にでかい。


これってエロ漫画とかその手のゲームや同人誌に出てくる『巨乳小学生』にしか見えないな。


凄いな異世界…漫画の人が現実に居るなんて。


「子供なのかな?」


「えっ…私はこれでも16歳だから、子供じゃないよ…まぁそう見えるよね」


「そうか子供じゃ無いなら良いのかな」


「何が? その前に良く私とお話しできるね。キモイ、死ねとか何時も言われているのに」


マジか?


イクミと違う意味で美少女…まぁ、外見だけで言うなら手を出したら前世なら確実に犯罪になる少女にしか見えない。


人気のない公園に居たら『ハァハァ、お兄ちゃんと遊ばない』と変質者に声を掛けられそうなタイプだ。


イクミが恋人なら、この子は、そう妹として仲良くなれそうだな。


「僕から見たら、凄く可愛い女の子に見えるんだけど…買っても良いのかな?」


「あの..買ってくれるの? 嘘…冗談じゃ無くて…こんなにキモイのに? 頭も大きしいチビなのに胸も大きくて豚みたいなのに」


「勿論、お兄ちゃんと呼んでくれるなら喜んで買うよ」


「お兄ちゃん…これで良いのかな?」


「買ったーーーっ」


「やったぁーーお兄ちゃんありがとう!」



「オークマン、欲しい子が居たからお願いして良いか」


「おっ、聖夜気に入った子が居たのか、誘ったかいがあるな、今奴隷商を呼んできてやるよ」


「ありがとう」



「廃棄奴隷コーナーですか? 今あそこに誰かいたかな? オークマン様間違いじゃ無いのですか?」


「いや、流石にそんな筈ないだろう」


暫く待つと二人が檻の前に来てくれた。


「この子を買おうと思うんだけど」


「「本気(マジ)」」


「ええっ」


なんで変な顔しているんだ?



◆◆◆


「廃棄奴隷なんだから無料で良いんじゃないか? 奴隷紋の代金銀貨3枚だけでいいだろう」


「いや、幾ら何でも無料は酷いですよ。此処はそうだ銀貨1枚でどうですか? 普通はどんな奴隷でも銀貨3枚はするんですから」


いや、普通に銀貨3枚プラス奴隷紋代金の銀貨3枚位払うって。


「だけどこの子じゃ市場で競りにも掛けられないだろう?そうしたら困るんじゃないか?」


「ううっ…それじゃ銅貨5枚+奴隷紋の代金銀貨3枚でどうですか」


「どうする聖夜、まだ粘れるが」


「それで良いですよ。何だかスイマセン」


「構わないですよ、オークマン様が言うのも一理ありますから...お買い上げ有難うございました」


「それじゃ、これでお願いします」


何だか凄く悪い気がしたので銀貨4枚奴隷商に渡した。


「これは…」


「差額はチップです。お釣りは要りません」


「有難うございます」


銀貨4枚(4万円)でも安すぎるだろう。



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