9 決戦!

 じゅうびょうちかくがって、あのあかひかりくうかんえさった。

 シグマとローザはおたがいにじっとわせたまま、どうくつのなかにもどっていた。

 あかくうかんのなかでは、どんなくつなのかはわからないけれど、かんながれがまっていたようだ。

 オロチにもなかたちにも、なんのへんもない。

 なぞあかくうかんどうするちょくぜんまでのようとまったくおなじにえた。

 だけど、あのあかくうかんたいけんしたごとけっしてまぼろしなんかじゃないぞ!


 ハヤト……。

 シグマはこころのなかでそうった。おれは、きみのねがいをけた!


かいほろぼさんとするじゃあくなるマルスよ。せめて、そのちからをおれにもせ!」

 シグマはそううと、さやからぬいたままのハヤトのつるぎりょうでかまえた。こしのうしろのあたりまでつるぎき、りょうったままばっとうするようなポーズをる。


「そのは……! わたしをふういんした、あのハヤトとかいうガキが使つかった――」

「オロチ、あんたのったことは、もしかしたらただしいのかもな。でもさ、おれはひとやさしさもっているんだ。ひときたいんだよ。――だからオロチ、おまえをたおす!」


 そうげたシグマのこころにマルスがはげしくはんのうした。

 つるぎのソーサリー・ストーンからこうずいのようにあふれてきたあかひかりてんじょうまでほとばしると、シグマのぜんしんうずきのようにおおい、かみをたなびかせるとっぷうきあれた。

 あざやかなあかかがやきが、またたくまにしゅうらしていく。


「パスワードは――」


 ――きっとシグマなら、ぼくじょうちからせるとおもうんだ。そのちからでみんなをまもれ。


 あかくうかんえさるまえに、ハヤトはそうっていた。そしておしえてくれた。

 を。その使つかうためのパスワードを!


「なぶりごろしはなしだ! さいだいしゅつりょくいっにケリをつけてやる。えされ、ぞうぉ!!」

 オロチのふたつのあたまが、ぐんとバネのようにのけぞった。おおきくひらいたふたつのくちからきょうぼうひかりはじけて、あふれて、バカでかいマルスほうがふたつんでくる!! 

 はやい! よけきれない! りょくもすさまじいにちがいない!

 だけど、それがなんだよ! 

 シグマはぶんでもしんじられないほどれいせいだった。


ちょうげきくうざん!!!」


 シグマはハヤトからおしえてもらったパスワードをくちにした!

 それとどうに、りょうでかまえていたつるぎぜんりょくまえへとふりぬいた。

 そのいきおいのまま、つるぎうえきあげる。

 すると、あかいマルスのひかりちょうこうそくきょだいたつまきになって、ハヤトのつるぎからはなたれた。

 オロチがはっしゃしたさいだいしゅつりょくのマルスほうはつとも、そのあかたつまき――ちょうげきくうざんしょうとつする!

 ふれるものすべてをくかのようなはげしいおとてて、ぐるぐるとうずきながらちょくしんしていくちょうげきくうざんは、ふたつのマルスほうをもののすうびょうらってしまった!

 スピードをはやめ、パワーをつよめ、あいこうげききゅうしゅうしてさらにきょだいしたあかたつまきが、おどろきときょうひらいたオロチに、ぐんぐんせまっていく。


「お、おのれぇ!! まずいッ、このままでは……!」

 くちをひんげながらオロチがぜっきょうした。

 あかひかかがやたつまききょだいそうとうのヘビをつつみこみながら、ズバズバときざんでいく。

「このわたしが……にんげんどもごときにぃぃ!」

 まくやぶれそうなほどおおきな、オロチのめい! 

 しかし、そんなめいをあげたのをさいに、そうとうのヘビはひどくれいせいになった。

みとめがたいが……ぞうちらしいな。シグマとったか。ちゃんとるがよい。それがしょうしゃれいであろう」

 あかたつまきにのみこまれながらも、オロチはいた調ちょうではっきりとそうってきた。

「おれのはシグマ・ノルニルだ。フタマタのオロチ、おまえをたおしたものだよ」

「……運命の女神たちノルニル、か。よい名だな」

 そうったオロチがさいにどんなひょうじょうをしていたのかはわからない。

 なおもりょくつよめたあかたつまきが、とうとうヘビのぜんしんえなくしたからだ。

 そのちょくに、あかたつまきどうくつてんじょうごとオロチをばしてしまった。

 ぽっかりとおおきなあなのあいたどうくつてんじょうから、まぶしいひかりしこんでくる。


「……シグマ! おまえ、とんでもないよ!」

 ジャンがいているのかわらっているのか、よくわからないかおびかけてきた。

 ジャンはひとりではてないらしい。ミサキにかたりて、こちらにあるいてくる。

 ミサキもボロボロだ。

がいとやるじゃないか」とって、ミサキはシグマにウインクした。

 のっそりとちあがったジュズまるも、うれしそうにりょうをチカチカとひからせている。


 ただひとりローザだけが、いとれたにんぎょうのようにめんすわりこんだままだった。

 シグマはかのじょかたにそっとをのばした。

「おにいちゃん……」

 くうちゅうでシグマのゆびさきまる。

 ……いまは、そっとしておいてあげよう。


「ありがとう、ハヤト」

 それだけをって、シグマはローザのあにからたくされたつるぎさやにおさめた。



 ――エピローグへつづく

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