第七話 作業厨、20階層を踏破する

 外道な冒険者殺しに遭遇しながらも、それ以外は順調に魔物を倒し、時たま見つける宝箱の中身にがっかりしてを何時間も続け、ようやく20階層も踏破目前となっていた。

 だがやはり20階層の最後にも、10階層の最後と同様階層ボスの部屋が見えてきた。

 扉の前には前と同様冒険者が並んでいるが、10階層の方と比べると少ない。

 まあ、そりゃここに来るまでの難易度が上がったんだから当たり前だよね。

 そんなことを思いながら、俺たちは列に並び、順番を待つ。ニナはシュガーとソルトを愛で、俺は魔法の開発だ。

 そして、予想よりも早く、俺たちの番になった。例に漏れず扉の向こう側の探知していたが、死者はおらず、皆ちゃんと階層ボスを撃破し、通り抜けている。


「さあ、入りましょ」


「ああ。さて、どんなのが出るかな?」


 20階層の階層ボスは何なのかに興味を膨らませながら、ニナと共に扉を開け、中へと入る。

 中は前と同じようなちょっと広めの空間。そして、入って来た扉がバタンと音を立てて閉じると同時に、部屋の中央に赤い魔法陣が出現する。そして、魔法陣が光り輝いたかと思えば、そこに体長3メートル程の岩で出来た人型の魔物が3体、姿を現した。


「ゴーレムって奴かな?」


 初見だが、見た目から俺はそう予想しつつ、鑑定を発動させる。


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 ・名前 なし

 ・年齢 不明

 ・性別 なし

 ・種族 ストーンゴーレム

 ・レベル 124

 ・状態 健康

 身体能力

 ・体力 10800/10800

 ・魔力 8220/8220

 ・攻撃 11200

 ・防護 12890

 ・俊敏 4900

 魔法

 ・土属性レベル3

 パッシブスキル

 ・物理攻撃耐性レベル3

 アクティブスキル

 ・剛腕レベル3

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 岩で出来ているから、ストーンゴーレムってことか。

 ステータスを見るに、こいつは鈍足であることに目を瞑れば、レベル以上のステータスをしている。

 だが、その鈍足があまりにも致命的過ぎる。


「グゴゴゴゴ!!!」


 3体のストーンゴーレムは俺たちを視認するや否や、一斉に突撃してくる。

 だが……やはり結構遅い。

 その隙にニナは魔法を唱える。


水槍アクアランス!」


 すると、出現した大量の水が、いくつもの槍の形になったかと思えば、まるで生き物のようにうねり動き、ストーンゴーレムの足元に襲い掛かる。


「グガギガガガガ!!!」


 その攻撃で、ストーンゴーレムの足が欠ける。更に、それと同時に散布された水でストーンゴーレムは一斉に転倒する。


「グガガガガギガ……」


 ストーンゴーレムは必死に起き上がろうとするが、地面が滑るのに加え、自身が重すぎるせいで、中々立ち上がることが出来ない。


「これでよしっと。あとは適当に遠距離から攻撃するだけで、誰でも簡単に倒せるわ」


 ストーンゴーレムの惨状を見て、ニナは満足気に頷く。


「そ、そうか。確かに誰でも倒せるな」


 ストーンゴーレムの性質を利用した見事は嵌め殺し法に、俺は思わず息を呑む。

 あれじゃあもうストーンゴーレムは何もできない。あの状態から立ち上がるには、下の水が全て地面に吸収されないと無理だろう。


「まあ、遠距離から倒させてもらうか。氷槍アイスランス!」


 俺はそう言うと、氷槍アイスランスをいくつか飛ばして、3体のストーンゴーレムの魔石を完全に破壊した。


「ガギガ……ガ……」


 動力源を失ったストーンゴーレムは、そのまま糸が切れたかのように動かなくなってしまった。そして、ボロボロと岩が崩れて石になり、更にそれが砂になり――

 やがて、最後にそこに残ったのは、やはり1つの宝箱だった。


「さて、宝箱の中身は何だろな~」


 階層ボス討伐の報酬ということもあってか、自然と期待感に胸を膨らませていく。

 そして、宝箱を手に取ると、パカッと開け、中身を見る。


「……何だこれ?」


 そう言って、俺は中に入っていた緑色の球を取り出す。

 手にすっぽりと納まるような大きさで、触った感触から、ガラスのようなもので出来ているように見える。


「……あ、鑑定すりゃいいのか」


 最近忘れていたが、鑑定というスキルは、生物だけでなく、物にも使用することが出来る。

 そのことを思いだした俺は、この緑色のガラス玉のようなものに鑑定を使う。


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 名前 粘着型妨害球

 主に錬金術によって作られる妨害道具。対象に投げつけると、破裂するとともに緑色の粘着物質を散布して、対象の動きを妨害する。

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「なるほど。そういうやつか」


 鑑定結果を見て、俺はなるほどと納得する。

 つまり、これを魔物とかに向かって投げつければ、ねばねばとした物質が体に絡みついて、動きを阻害するってことだ。

 シンプルかつ凶悪な妨害道具。中々面白そうだ。

 そんなことを思っていると、ニナも宝箱の中身が気になったのか、俺に近づいてきた。

 そして、俺が手に持つ粘着型妨害球に視線を向ける。


「ああ、それが出たのね。それは結構便利よ。投げて当てるだけで、戦いを優位に進められるようになるから。まあ、レインならそれ作れちゃうから、微妙かもしれないけど」


 そう言って、ニナは苦笑いをする。

 いや、作れるって言われても、作り方を知らないからどうしようもないのだが……

 今度王城の書庫で、錬金術に関する本を読み漁って見るとするか。

 そんなことを思いながら、俺は粘着型妨害球を無限収納インベントリにしまうと、ニナと共に部屋の外へ出た。

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