第五話 作業厨、気まずい雰囲気(?)になる
次の日の早朝。
「ん……?」
身体を動かそうとして見るが、何故か動かない。優しく、何かに絞めつけられているような感じだ。
何なのかと目を開けてみると、そこにはニナの姿があった。
俺の胸に顔を埋め、背中に手をまわし、抱き枕のように俺を抱きしめているという説明がつくが。
「……ああ、そういうことか」
段々と意識が覚醒してきた俺は次第に事情を把握していく。
どうやらニナは、寝ている間にゴロリと寝返りを打ち、無意識の内に俺に抱き着いていたのだろう。
「……この状況。どうするか……」
ニナが起きた時にこの状況だと、気まずい雰囲気になるのは明白。なら、ニナを起こさないようにそっと抜け出すべきか。
はたまた、もう普通にこのままでいるか……
雛鳥みたいに俺に身を寄せ、すやすやと寝ているニナが可愛くて、もう少しだけこのままでいたいという気持ちもそこそこあるんだよね。
「……まあ、このままでいるわけにはいかんか」
そう思った俺は、ここからそっと抜け出すことを決意する。
なに、この程度、転移で直ぐにでも抜け出せる。
そう思った次の瞬間――
「んん……むぅ……?」
ニナが、目を覚ましてしまった。
あ、やべ。
そうやって思考が少しだけ止まる。
その間にニナはさわさわと俺の背中を触る。そして、上目で俺の顔を数秒間見つめ――
「……あ」
自分が今、どんな状態なのかを把握したのか、途端にニナの顔が真っ赤になっていく。羞恥心MAXで、声も出ないといった感じだ。
そして、即座に俺から手を離すと、後ろへズサササッと後ずさりする。
「あ、あの……その……わ、わざとじゃないんです……」
両手で手を隠しながら、ニナは言葉を噛みながらそう言う。
「ああ、怒るつもりはさらさらないから。それに、悪い気分じゃなかったよ」
俺は起き上がり、ニナに近づくと、ニナの背中を優しく擦りながらそう言う。
「ほ、ほんと……?」
ニナは目元だけを俺に見せると、目を潤ませながら、縋るようにそう問いかける。
「本当だよ。嘘じゃない」
「それは……あ、ありがと……」
そう言って、ニナは視線を逸らす。
その後暫くの間、俺はニナを優しく宥めるのであった。
ニナが落ち着きを取り戻した頃、シュガーとソルトも目を覚ました。
そして、3人で手短に朝食を取ると、準備を整え、テントの外に出る。
テントの外には昨日見たよりも多くのテントがあちらこちらに設置されており、ちらほらとそのテントから出てくる人影も見える。
「さて、このテントは確か……ここだったかな?」
そう言って、俺はテントの頂点にある半透明の石に魔力を込める。
すると、シュババッと音を立てて、小さく、コンパクトになった。そして、それを手に取ると、
「これでよしっと。ニナ、もう行ける?」
「ええ、準備万端よ。じゃあ、行きましょう」
ニナは俺の言葉に、若干挙動不審になりながらも元気よく頷く。
「了解っと」
そう言って、俺はシュガーとソルトを肩に乗せると、ニナと共に先へと向かって歩き出した。
そして数分後、早速11階層の魔物と接敵することになる。
相手はボロボロの装備を着用し、剣を持ったスケルトン5体。
奴らはカラカラと骨を鳴らしながら、そこら辺を歩いていた。
「この階層でスケルトンって弱すぎ……でもなかった」
スケルトンがダンジョンの恩恵で武器防具を持っただけなのかと思ったが、鑑定でステータスを覗いてみた結果、それだけではないことが分かった。
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・名前 なし
・年齢 不明
・性別 なし
・種族 スケルトンソルジャー
・レベル 56
・状態 健康
身体能力
・体力 5100/5100
・魔力 3800/3800
・攻撃 5200
・防護 4100
・俊敏 4600
パッシブスキル
・斬撃耐性レベル1
・再生レベル3
アクティブスキル
・剣術レベル2
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なんとこいつら、全員スケルトンソルジャーとかいう奴で、しっかり剣術スキルを持っている。まあそれでも、武器防具はダンジョンから貰ったものだろうけど。
すると、奴らが俺たちの存在に気が付いたのか、一斉に剣を振り上げ、カタカタと音を鳴らしながら駆け寄ってくる。剣術スキルによって、心なしか様にはなっているようだが、この程度、誤差でしかない。
「ここも簡単そうだ」
この階層も大したことはない。
そう判断するとともに俺は地を蹴ると、剣を抜き、人で言うところの心臓と同じ位置にあるむき出しの魔石を一刀両断した。
カラカラカラン
スケルトンたちはその後、一斉に崩れ落ち、骨が地面に散乱する。
「
後方ではニナが、新たに湧き出て来ていた3体のスケルトンソルジャーを、水圧によって強化された水の斬撃、
火属性魔法の方が威力は高いのだが、こういった閉所で多用しすぎるのはよくないということで、基本的には水属性魔法で仕留めているらしい。
「こっちも終わりっと。素材はないし、先に行きましょ」
「だな」
ニナの言葉に、俺は短く頷くと、再び先へと向かって歩き始めた。
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ニナも偶には……ね。
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