日常生活-1

『兄貴を殺したお前だけ幸せになれるとか思うなよっ!』

 

 

 

 思ってないさ。

 俺には幸せになれる資格ないんだからさ。

 

 『何かあれば連絡してきてね』




密かに淡い恋心を抱いていたあの人は俺にそう言った。

言えるわけない。

だってこれは俺の問題だから。

 

 

 

それから月日は流れ。

俺は大学生になった。

 

 

「好きです!」

 

 

 

何度目かわからないけど、俺は女の子に告白された。

俺は猪熊由貴いのくまゆき

都内の某私立大学に通う大学生だ。

でも。

俺の返事は必ず決まっていた。

 

 

 

「ごめん。俺、女の子に興味ないんだ」

「そっかそうだよね」

 

 

 

告白してくれる女の子たちには悪いけど、俺はそう答える。

仕方ないじゃん。

 

 

 

だって俺は、世間じゃ

同性愛者《ゲイ》ってヤツだから。

 

 

 「はぁ」

 

 

 

毎回のことながら気分が滅入る。

俺を知る友人は仕方ないって言ってくれるけど。

 

 

 

「由貴ーまた告白かよ」

「純。あ、うん。まぁな」

 

 

 

 こいつは假屋純平《かりやじゅんぺい》

 俺がゲイだと知る数少ない友人。

 

 

 

  「落ち込むなよ!こればかりは仕方ないじゃん」

  「わかってるけどさ……」

 

 

 

 断った女の子たちが気の毒でならない。

 

 

 

どうしたって俺は女の子たちにそういう好意を抱けない。

それに俺は好きな人がいる。

 

 

 

 気持ちを伝えるつもりはない。

 そばにいるだけでいいから。

 

 

  「でさ、由貴!」

  「ん?」

  「面白いサイト見つけたんだ」

  「面白いサイトー?」

 

 

 

 またか。

 こいつは、また変なサイトを見つけたのか。

 

 

 

 こいつはいつもそうだ。

やアプリを見つけたとか言って、俺に怪しげなモンを教えてくる。

 

 

 「"面白い"じゃなくて、"あやしい"じゃないのか?」

 「失礼だな!これだよ、このサイト」

 

 

 

 そう言って、純は俺にスマホを見せてきた。

 

 

 

「同性愛者専用のマッチングアプリだ」

 

 

 

 

 同性愛者専用のマッチングアプリ?

 へぇー、そんなサイトあるんだ。

 

 

 

 「お前はさ見た目いいんだし、その気になりゃあ恋人の1人や2人できるって」

 

 

 

 純は笑いながらそう言ってきた。

 



というか、恋人は1人しかいらないって。

 

 

「そう、だな。試しにやってみようかな?」

 

 

 

そう言って俺はアプリに登録してみることにした。

大学内でダウンロードすりゃあデータ使わないしな。

大学から渡されたモバイルルーターでもいいんだけど。





「由貴?何してるの??」

「律!純がさマッチングアプリすすめてきてさー」


律と話ししながらアプリを登録した。






 

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