第5話 meet:予期せぬ出会いは幸か不幸か





 「ここは、タイルワインド立魔法科高等学

 校‥‥。君の話を聞かせてほしいな。」


 


 『‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥はぁ?』




 やば‥‥‥なんて返そうか。

 随分とほうけてしまった。




 『えと‥‥‥えーっと‥‥‥あの、その‥‥。』


 「‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」



 数多の目々にじぃーっと見つめられる。

 


 『ぼ、僕‥‥‥その、なんか気付い‥‥‥‥』


  



  ゴォーン… ゴォーン… ゴォーン…


  テンテレテンテン~ テレレレレ~



 突然、どこからか僕の話をさえぎるように鐘の音とやわらかなリズムが響き渡る。

 

 


 「やべっ‥‥もう消灯かよ!」


 「課題終わってねぇ‥‥明日提出だろ?」


 「あぁ‥‥お前は終わってるけどな。」


 

 

 あそこの男子3人組? は明らかに慌てた様子でこの場から立ち去っていく。

 消灯? 課題? 何のことだろう。


 

 「んで、こいつどーすんの。」


 「う~ん‥‥もう消灯だもんねぇ~。」


 「空き部屋がこんな形で役に立つとは」


 「んん~もう帰ってもらいますか‥‥?」


 「ええぇ‥‥ちょっと酷じゃないかしら‥‥。」



 んん‥‥どしたの? なんだこの人たち‥‥。



 「リグフトが拾ってきたんだろ?

 お前がどーにかしろよ」


 「はぁ‥‥!? 押し付けてくんな」


 「はぁ!? 知らんわ!! だってお前が

 拾ってきたんだろ!?」

 

 「そりゃ誰かぶっ倒れてたらそうするだ

 ろ!!」

 


 今度は男子2人がなにやら言い合っている。

 もう収集つかんて‥‥。



 「あぁ‥‥しかし今日はもう遅いからね‥‥。」



 おや、再びあの好青年っぽい子が口を開いたぞ?



 「リグフト君‥‥よろしく!! それじゃ、

 おやすみ~!」



 と思えばスッと部屋のドアを開けて退出していく。

 人任せかよ!?



 「はぁ‥‥!? おい、ちょっと‥‥!!」


 「はーい解散~。」

 「うはぁ‥‥眠っ‥‥。」

 「お粥置いとくから食べてねぇ~。」

 「薬も置いとくぞー。よく寝ろー。」

 「明日って体育あったっけ?」

 「ないない、変更で魔力値測定でしょ。」

 「それマジ‥‥? 最悪‥‥。」

 「じゃーねー! ばいばーい!!」



  パタン…



 「オイ‥‥お前ら‥‥。」


 

 元気そうな薄桃色の髪をした女の子を最後にみんな部屋を出て行ってしまった。

 この部屋にはもう、僕と1人の男の子しかいないようだ。


 

 『あらら‥‥行ってしまった。』

 

 「まじか‥‥なんだあいつら‥‥。」


 『ど、どしたの‥‥?』

 

 「あぁ‥‥‥‥よし、まぁ付いてきてくれ。」


 『えぇ‥‥‥うん。』


 

 その子は明らかに面倒臭そうに頭を垂れ、しぶしぶ僕を連れて歩き始める。

 多分、迷惑かけてるんだろうけど‥‥もうちょっとくらいオブラートに包んでくれてもいいじゃないか。


 

 「‥‥ミナトだったっけ?」‥‥ガチャ


 『へ‥‥? あ、うん!』



 さっき僕が寝ていた部屋から出て、廊下らしき造りの道を進んでいく。

 初対面だけどけっこうフレンドリーに話してくれるな、この子。



 「サッと説明するとさ、君、この近くの森

 でぶっ倒れてたんだよね。がっつり意識も

 失っててさ」


 『え‥‥? そ、そうだったの?』



 何ィ‥‥!? 僕、疲れて倒れたのか‥‥?



 「そ‥‥んで、夜も近かったからな、何とか

 この寮まで運んで来たってわけ。」

 

 『寮‥‥?』

 

 「そう。タイワ魔法の寮。高校の。」


 

 たいわ魔法‥‥? 寮? 高校!?



 「知らん? 君、制服っぽいの着てるし、

 たぶん学生なんだろ? 魔法科まだ少ない

 から知名度あると思ってたんだけどな‥‥」


 『いや‥‥ごめんなさい、何言ってるか全然

 分かんないです‥‥。』


 「はぁ‥‥!? 本当に? まぁ、要するに

 危ない状況だったから保護したってこと。

 そしてここは学校の寮、俺たちはタイワ生

 だからね。」


 『‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。』


 「体調良くなったら帰るんだぞ。もし先生

 とかにバレたらやばいからな。でも今日の

 1日くらい泊まっていった方が良い、もう

 外も真っ暗だから。」


 

 確かに。ガラス張りの窓越しに見える外の景色はもう夜更け。辺りはしーんと静まり反っている。

 帰るもなにも‥‥ここが何処どこなのかすら分からないというのに‥‥。

 いや、聞けばいいのか。せっかく話してくれる人が居るわけだ。

 どこにいるかくらい分かればあとはなんとでも‥‥。



 『あ、あの‥‥ここって‥‥』

 

 「あー、そう言うと思って地図持ってきた

 から。はい、自分の国探してみ? 事情は

 知らんけど、手を出した以上手伝うから」



 そう言って彼はポケットから地図を取り出して広げた。

 無駄に用意周到だなぁ‥‥。


 

 「どうだ‥‥? お前どこから‥‥」


 『は‥‥なにコレ‥‥嘘だろ‥‥?』


 

 僕が目の当たりにしたのは、明らかに見慣れない形状の地図。

 トゥルーチ、クラドレ、タイルワインド、ダンセル‥‥etc‥‥。

 地図に記載されるこれらの文字に対し、僕の脳内に直感が語りかける。

 これらは恐らく‥‥国名‥‥?

 だが、そんなはずが無い。過去15年、僕はそんな国名を聞いたことがない。

 


 「なぁ‥‥君、どっから来たんだ?」


 

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