第7話 「侍従長の妻の罠」

「旦那様!

奴隷の身でありながら・・セツラは再び悪事を働いたというのは本当ですか?」


侍従長ポティファルの妻アダは、興味津々に問いかけてきた


実は、セツラが牢に入れられるまで

侍従長の家の執事であった。元々奴隷の身分であり、イシュマエル人の商人から1年前に買い取られていたのである。


セツラは美少年であり

人柄がよく、礼儀作法が身に付いており言葉遣いが丁寧で、とても利口で器用であり、有能である事は、誰の目にも明らかであった。

その為、僅か1年で、奴隷の身分は解消され、主人の財産の管理を任されるようになったのである。


しかし1か月前、セツラを貶める事件が発生していた



ポティファルの妻アダは、セツラに目をつけており、とても親切にしてあげていた。

妻アダには下心があり、美男子であるセツラに好意を抱き

「私と寝ておくれ!」と誘惑するようになり、セツラを大変困らせていた・・


実は、ポティファルの妻アダの悪い噂は

家の者全員の知るところであり、これまで多くの家人が誘惑を受け

主人の恨みを買い、重い処罰を受けた者がおり、中には命を奪われる者もいた。

ポティファルは妻アダを愛しており、彼女の言葉を信じており、嘘が隠れている事を疑いもしなかった。



ある日のこと、セツラが仕事をしようとして家に入ると、家の中は誰もそこにいなかった。ポティファルの妻アダがそのように仕組んだのであった。


妻アダは、セツラの上着をつかんで、言った。

「私と寝ておくれ」

しかしセツラはその上着を奪われ、外へ逃げてしまった。


「セツラめ!

私の誘いを何度も拒むとは、良い度胸ではないか!

私を受け入れないような者は、この家には必要ない!

奴が私を誘惑して、体を求めてきた!と夫に訴えてやる!

夫は私を信用しているから、きっとセツラを裁いてくれるだろう!!」


妻アダは、夫に告げて言った。

「あなたが私達のところに連れてこられた奴隷セツラは

主人の好意を受け、執事としての身分が与えられた事を良い事に

傲慢にも、許されない裏切り行為をしました!!」


「アダよ!セツラ執事は何をしたのだ?」


「聞いて下さい!!!

・・・・・・・・・・・

しかしこのような事は・・私の口からは・・言えません・・・

あの者に聞いて下さい!!!」


「良いから!言うのだ!」

ポティファルは怒りに燃えて叫んだ!


「あの者は・・私が私が昼寝をしている部屋に入り込み

私にいたずらをしようとしたのです!この上着が証拠です!!」


「何という事を!!!

セツラめ!私が目をかけて奴隷という身分を解消し、執事にまで取り立てた恩を仇でかえすとは!許される事ではない!!即刻、あの者を捕えよ!!!」


セツラは捕えられ、牢に入れられてしまったのである。

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