【10万PV突破感謝!】カースト最下位の俺は負けヒロインの練習相手になってほしいと次から次へと希望者が続出するようになった

タキテル

第1話 私を触りなさい


 きっかけは幼馴染の白石侑李しらいしゆうりに好きな人がいることと告白したいと相談したことから始まった。


「はぁ? あんたがあの西蓮寺さいれんじさんに告白するだって?」


 一瞬の間の後に侑李の堪えきれない感情が一気に爆発する。


「ぷふっ。あはははははははははははははははは。無理、無理。天地がひっくり返っても付き合えないことは見え見えじゃん。言うだけ無駄! 西蓮寺琴吹さいれんじことぶき。冗談はほどほどにしてよね。あーお腹苦しい!」


 拳を床に叩きつけながら大笑いする侑李は俺を小馬鹿にした。いや、完全に罵った態度を見せる。

 俺、佐伯高嗣さえきたかつぐは何をやってもダメダメの底辺の高校生一年生だ。

 世の中にはカーストというものが存在する。

 ピラミットの形をモチーフにして天辺になるほど上位の立場と言える世の中の出来型だ。食物連鎖の例によく当てられるもので俺はその中でも底辺。つまりカースト最下層の中でも最下位に位置する人間なのだ。

 顔もダメ。学力もダメ。資産もダメ。何を取っても他人より勝るものはない。

 あいつよりはマシと真っ先に俺を名指しされるほど最下位のダメ人間だ。

 そんな俺は入学当初から目立っていた西蓮寺琴吹さいれんじことぶきに惚れた。

 全てが完璧で顔も学力も資産も最上位の位置に君臨するまさに誰もが憧れる完璧人間だ。

 その西蓮寺に告白すると言うのだから幼馴染の侑李は笑いの渦に飲まれているのだ。


「はぁ、笑った。久しぶりに大笑いしたよ。何も取り柄がないあんたにも人を笑顔にすることは出来るんだね」


「笑わせたつもりはない。お前が勝手に馬鹿笑いしただけだろ」


「大事な話があるから家に来て欲しいって言うから何事かと思ったらこれだもの。いやーこれは傑作だわ」


「うるせぇな。こっちは真面目なんだよ」


「ごめん、ごめん。一応謝っておくわ。でもマジで辞めておきなよ。本当に無駄だと思うから」


「なんで何も言わずに諦めるんだよ。言ってみなきゃ分からないだろ」


「分かるよ。だってあんた西蓮寺さんに何かアピール出来るものある?」


「アピール出来るもの?」


「西蓮寺さんは自分と同じ位の人じゃないと見向きもしないよ。あんたがせめて最上位の人間なら勝負出来るけど、最下層の底辺から何を言われてもときめくものは微塵もないわよ? それを分かって言っているの?」


 侑李に言われた俺は何も勝るものがないことを痛感した。

 俺に残されたものは何もない。あるとしたら人より劣っていることくらいか。


「夢の中でなら何をしてもいいけど、現実はやめておきなさい」


「じゃ、俺はこのままずっと童貞なのか」


「高望みしなければ出来るんじゃない?」


「いや、俺は必ず西蓮寺琴吹さいれんじことぶきに告白できる逸材になる」


「その自信はどこから来るのよ。今は辞めておいた方がいいけど、今後の努力次第じゃない?」


「努力か。俺の足りないものを磨くには何をすればいいんだ?」


「はぁ、私が幼馴染であることに感謝しなさい。しゃーないから練習してあげる」


「練習?」


「西蓮寺さんは愚か、普通の女の子だって今のあんたには付き合えっこない。だからこの侑李様がカースト最下位のあんたに指導してあげる」


「カースト最下位っていうな。メッチャ気にしているのに」


「なら、言われないようなポテンシャルを身に付けなさい」


「ぐっ。分かったよ。で? 練習って何をすればいいんだ?」


「私が恋人の練習になってあげる。それで女心を勉強しなさい」


「な、なるほど」


 侑李は俺と違ってカースト最下層の人間ではない。

 どちらかと言えば普通だ。

 顔は普通だし、勉強も数学が得意以外は普通。家も一軒家で普通の家庭だ。

 何を取っても普通の女の子である。

 そんな侑李だが、以前は恋人がいた。中学までは同級生のサッカー部のエースと付き合ってよく自慢をしていた。だが、後から発覚したが、その男は侑李以外に本命の女の子がいたらしい。

 遊び相手にされた侑李は酷く落ち込んでいたのは記憶に新しい。言ってみれば負けヒロインであるが、本人にそれを言えば殴られることは避けられない。


「女の子がどんなものか。そのためにまず、私を触りなさい」


「触る?」


「さぁ、これが年頃の女の子だ。好きなように触っていいよ」


「え、じゃ」


 と、俺は胸に手が伸びた。


「バカ! いきなり胸にいく奴がどこにいる。これだから童貞なのよ!」


「じゃ、どこ触ればいいんだよ」


「まずは頭ね。優しく撫でなさい」


「分かった」


 俺は侑李の頭を撫でる。

 そして頬を触り、首に手が伸びる。


「ひゃっ!」


「侑李?」


「何でもない。続けなさい。それにしてもあんた。触り方……うまいわね。少しドキドキしちゃったじゃないの」


 侑李は頬を赤めながら言う。少し照れ臭そうにしながら俺は女の子がどういうものなのか、侑李の身体を触りながらじっくりと勉強する。


「女の子って柔らかいんだな。腕も脚もお腹も」


「ちょっと。触り方がやらしい」


「でも、これも女の子を知るための練習だし」


「分かっているわよ。さぁ、続けて」


「あの、続けるってどこまですればよろしいので?」


「えっと最後まで?」


「最後?」


「れ、練習だからね。勘違いしないでよ!」


「分かったよ。じゃ、遠慮なく」


「――――――――――――――――――――っ!」


 胸を揉んだ。でもこれは女の子を知る為の練習だ。本番のようにやらないと練習の意味がないと思い、俺は侑李の身体のありとあらゆる部分を触り尽くした。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。触られただけなのに。何よ、この感情」


 侑李は全身真っ赤になりながら火照っていた。


「ありがとう。侑李。女の子の身体がどうなっているのか、よく分かったよ」


「私は女心を勉強させるつもりだったけど、何で身体を勉強しているのよ。心を勉強しなさい」


「悪い。つい、流れで」


「まぁ、いいわ。私も触られて少し気持ちよかったから。でも、これはあくまでも練習の一環だからね」


「もう一回練習しておくか?」


「…………また今度ね。後日、デートの練習をしましょうか」


 いつもの侑李はバカと言って突き放すのだが、今は素直な気持ちが出ていた。

 そして次はデートの練習をすることとなり、俺のカースト最下位の脱却計画が進行しようとしていた。



……………………………

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