朝はパンとコーヒーで

@harukaakito777

第1話『新しい街』

カーテンって買わなきゃいけない物なんだって、一人暮らしを始めた夜に気づく。

東京だってこういうアパートの周りは夜は暗くて、静かで、地元とあまり変わらない。

違うのは匂いと、空気、それにパンとコーヒーが違うんだ。


朝が来ると目覚まし代わりの朝日が眩しく照らす、

古くも新しくない、木造二階建てのアパートの二階の角部屋、の隣の部屋。どうせなら角部屋が良かったのになんて思いながら、雑多に置いた段ボールの1つをテーブル代わりに朝食をとる。

今までの僕は家で朝食は食べなかったのだが、新しい街で勝手も違うから、昨日のうちに朝食用のパンとコーヒーは購入済みだ。


朝食を終えた後は少し散歩に出た。

昼間の新宿とは違い、この町は静かで東京に来たことを忘れさせる。でもやっぱり地元とは空気が違うから、東京なんだと、期待と不安が入り混じった気持ちになる。

アパートの前を流れる神田川沿いをぼんやり歩く、時々すれ違う年齢も様々なランナーや、自分と同じように散歩をしている人たちとすれ違う、その度に軽く会釈を交わし口の動きに合わせ、小さな声で挨拶も交わす。

聞こえないのが申し訳なくてイヤホンを片耳だけ外し、また歩く。

今日は引っ越しの片づけと区役所に行く用事しかない、まだ時間はあるから歩みを更に進めていく。


30分ほど歩いただろうか、川沿いの道から車道が横切る道へ出る。

まばらに通る車を見ながら、左右どちらに進むか、それとも戻るかを考える。

「まだ時間はあるし、もう少し歩いてみるか」

右か、左か、首を振り進むべき道を定める。

「よし、右だな。なんかぐるっと回ればアパートのほうに行けるかもしれないしな。」

人通りも少なくなってきた、片側だけ外したイヤホンを耳に装着して、」また歩き始める。


少しすると開店前の本屋を見つけた、家からは少し遠いけど雰囲気の良い本屋だ。

天気の良い日には足を延ばしてみようと思う。

また進むと今度はお肉屋さん、コロッケやメンチカツ等も売っている。少し腹は減っているが朝にはちょっと重たい、またの機会にしようと思う。

その先にも店が並ぶ、時間がもう少し後ならきっと賑わっているのだろう。今日の予定がすべて終わったら来てみようかな、なんてことを考えてると、ふと、目を奪われた。

洋風で、綺麗で、どことなく古い感じの扉、看板も出ている。僕が吸い込まれるようにそのお店の前に立つ。

「喫茶店か、モーニングが500円・・・よし」

朝ごはんにスーパーで買った食パンを一枚、食べてはいたが入ることにした。

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