第39話おねだり




「見えて来たぞ。あれがこの国の【王都バレンシア】だ……」


 俺は竜車の窓に頬を押し当てるようにして王都を見る。

 魔術と言う現代人にとっては、異質なモノがあるせいで文明レベルにバラつきを感じるものの、王都と呼ばれる都は花の都パリや霧の都市ロンドンのような雰囲気を感じる。


 建築技術は、産業革命以前のヨーロッパ諸国と言ったところだろうか……


 歴史は好きだが、細かい部分が好きなわけではないのであやふやだが……


「あれが王宮ですか……」


 綺麗に整地された王都。その奥に宮殿と言うべきか平城と言うべきか、知識の乏しい俺には判断できないが、大きな建造物が見えた。


「そうだ。白亜の巨城こそ、【白盾城はくじゅんじょう】。この国のまつりごとが行われる 伏魔殿だ」


 整備の行き届いた美しい宮殿をみて伏魔殿……悪魔が潜み見かけの美しさとは裏腹に、陰でが陰謀などが絶えず企 《たくら》まれている場所と言われ、少しがっかりする。

 

 英国のバッキンガム宮殿、ウェストミンスター宮殿や、庭園の美しい仏国のヴェルサイユ宮殿、外観の美しいドイツのノイシュバンシュタイン城。などなど美しい宮殿や城は見て来たが【白盾城はくじゅんじょう】は、そのどれにも似ている美しさを感じる。


「……」


「安心しろ。貴様では通常の登城の許可はまだ・・下りない。せめてあの暴竜めをそこの魔女・・の力添えなく倒していれば、話は変わったかもしれんがな……」


 もしゲーム序盤の死亡イベントを無事に乗り越えて、【前線都市アリテナ】へ行きアリテナで生き残る事が出来たなら、俺の理想の城を建てようと心に決めた。


 そのためには先ず、陛下や上級貴族からの覚えを良くしておかないとな……


「イオンくん酷い! 魔女って差別用語よ……」


 シャルロット先生は抗議の言葉を口にする。


「今更否定できない事実だろう? 我々貴族は自分の制御下にない魔力持ちを処分してきた。その際に魔女やとして葬って来た事は……それ以降強力な敵国の魔術師を魔女と呼んでいるだけだ。他国からは【風刃】の魔女と呼ばれているだろう?」


 兄はそんな事がどうしたと言った態度で、先生の抗議の声を封殺する。


「それはそうだけど……味方から魔女って呼ばれたくないのよね……」

 

ふうじん……風神……風刃? あぁ、【風ノ太刀】が由来なのか……確かにあの絶技はゲームでも存在しなかった極地にある。幸い風属性の適性が高いエルフの血を引く俺なら、【風ノ太刀】をより効率的に使える可能性が高い。目指すべき頂きは二つ見えた。イオン兄さまとシャルロット先生だ。だが俺は完全に二人に成るわけではない。自分で進むべきカタチを模索してやる! 幸い俺にはゲーム時代の知識もある。案外早く到達出来るかもな……


「シャオン、シャルロット二人は今日はゆっくり休め。明日から本格的に動きあの貴族クズ共の協力を取り付ける。」


「助かるわ……」


 シャルロット先生は心の底から面倒くさそうに、感謝の言葉を口にする。


「イオンお兄さまはどうされるのですか?」


「王都に戻り次第、今回の変異種による被害報告と勇者捜索の事をお伝えする事になっている……それがどうかしたのか?」


 兄はどうしてそんな事を? と言いたげな表情を浮かべる。


「いえ。当事者が居た方が報告するには良いのではないかと……」


「ほう……」


 兄の鋭い双眸そうぼうがあやしく光ったように感じる。

 

吞まれるな! これが伏魔殿に巣くう魔物共のオーラか!!


「イオンお兄さまは、閣下の土地を委任統治する責任者……陛下より預けられた土地を管理・監督できなかったゆえに王宮に召還、あるいは弁明に参る事と思います」


「……その通りだ」


「で、あるのならば専門家の意見と当事者の意見を持って弁明し、イオンお兄様の名誉を傷付けない方が良いと思われます」




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【あとがき】


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作者のモチベにつながり、執筆がはかどりますますので宜しくお願いしますm(_ _)m

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