異世界リーヴェルシュタールの管理人〜神様から異世界もらって仲間がどんどん増えます〜

月桜 兎

第1話 少女がリーヴェルシュタールにきた訳


「私、これからもこのままなのかな?」



 思わず、そう口に出してしまった。私の名前は、ナツメ。苗字は、親のどちらを使っていいか分からないけれど、母親の性のカタギリを使っている。正直、どちらも嫌いな名前だけど、戸籍上仕方なく名乗っている。なんなら、この髪の色と目の色も嫌い。


 私は、まだあの人達を憎んでいるから、私について話せない。この世界、ラファレーンも嫌い。でも、1番はこんな自分が嫌い。そんな日々を過ごしているから、現実逃避したくなる。


 そんなある日。私の家にある、魔鳥箱(※1)が鳴いていた。中を見て見ると、白い紙(※2)が入っていた。中身は、恐らく……。なぜ家にこれが届いたかは、分からない。しかし、届いた物は仕方ない。開けようとして、部屋まで行く事にする。


 部屋に着いたので、ようやく開けられる。そう思ったら、家の中に突風が吹き荒れて、手紙の中に吸い込まれているように見える。しかし、手紙に吸い込まれるのは、私だけだ。だから、家具は一切動いていない。私が手紙に飲み込まれそうになった瞬間、手紙が淡い黄色に光った。その光景を見た直後、私は手紙に完全に飲み込まれた。



「ここが?」



 私に届いた手紙は、神様の手紙さらい(※3)と呼ばれている現象だ。この空間は、手紙さらいをした神様がやってくる、空白の手(※4)と呼ばれる空間。


 神様の手紙さらいは、普通は神様が私達の住んでいる世界にやってきた時に、神様と会っている事が条件で起こる。しかし、私は会った事がない。何でだろう?


 そうこう考えているうちに、上から、女神様がおりてくる。元気が良さそうで、明るい見た目をしている女神様。命と再生を司る女神様、フェラール様だ。



「フェラール様、私は……」


「いいよ、名乗りにくいんでしょ?僕が代役務めたのも、君に名前を名乗らせて信仰心を高めるためじゃないから」


「じゃあ、名乗りません。それより、代役と言うのは?」


「実は、僕の姉様が君に会っていて、神印(※5)を君に押しているって聞いたんだ。そして、君の事をすごく気にかけていた。だから、君の事を天界から見ていたんだよ」


「ありがたいと思います。その女神様の代わりが、フェラール様と言う訳ですね?」


「そうだよ。見た所、君はかなり苦しそうだよ?君がどうしたいか、考えてごらん。僕がサポートするから!」


「欲しい物……」



 私は、非常に困った。叶えたいのぞみは、あるけれど、叶えて貰えるものなのか?フェラール様が私にそこまで肩入れしてもいいのだろうか?そもそも、フェラール様の姉の女神様がなぜ私を気にいっているのか?



「……叶えられるなら、私が落ち着くまで、誰もいない世界で管理人として仕事をしたいです。可能なら、名前と髪、目の色も変えたいです」


「叶えられるよ。ただ、1つ条件を守って」


「何でしょうか?」


「僕達神だから頼りづらいかもしれないけれど、遠慮なく頼って。1人で抱え込み過ぎないで。これが守れなかったら、さっきの条件を破棄するよ」


「ありがとうございます」


「よしよし、じゃあ、君のパシファティ(※6)を確認しよっか」


「えっ、私はないですよ。協会でも、判定はF(※7)でしたし」


「君は、シークレット(※8)持ちだよ。協会の判定をすり抜ける事はたまにあるけれど、さすがにこれがF判定だったら、まずいもん」


「ええっ?!」



 何と私は、パシファティ有りで、その原因はシークレットだった事が判明。そして、フェラール様曰く、時間が経つと自然にシークレットは無くなるけれど、神水晶(※9)に触れると、すぐに無くなるらしい。


 私のパシファティを判明するためにも、神水晶をフェラール様が持って来てくれて、私もドキドキしながら神水晶に手をかざした。


 パシファティ:3

 パシファティ総合Lv:25

 パシファティ戦闘Lv:8

 パシファティ生活Lv:7

 パシファティ器用Lv:0

 パシファティ自由Lv:10

 どのパシファティを見ますか?

 ▶時、空間を操る(分離使用可、併合使用可)

 ▷異空間の作成、拡張、削除

 ▷想像した物を作成



「「……」」


 1番上は、使えるパシファティの数。総合Lvは、3つだったら最大で120だけれど、そんな数値は今までどの種族でも出た事ない数値。つまり、これはまだまだ低い。


 ただ、問題はそこじゃない。使えるパシファティが何かおかしい。いくらなんでも、すごく怪しい。


 ただ、神水晶は、絶対に嘘をつかない。協会の物は力が薄いから、判定が分かりづらくなっているだけ。だから、私は本物だと思った。



「フェラール様、この結果の心当たりとかあります?」


「うーん、分からない。元々、君はウェル姉の神印が押されていたから、すごく強いと思ったよ。それがこの結果だからね」


「えっ、ウェル姉って事は、もしかして私に神印を押した神様って、空間と時間を操るウェルール様?」


「そうだよ。でも、今は神様じゃない。今の神に反発する組織が出て来たのさ」


「えっ」


「世界連合(※10)にも関わっていたから、力が弱いうちに、他の世界の神々も集まって強い神達で力が弱いうちに潰そうとしたんだよ。でも、返り討ちにあったんだ。この世界で1番強いウェル姉は、神としての権限を剥奪された。幸い、命まで取られる事はなかったけれど、それでもウェル姉がいたから何とかなった場面が多かったから、一旦降参したんだよ。今は、解放されているけれど、あいつらに戦いを挑むんだったら、ウェル姉がいないと厳しい」


「そんな大事な話知りませんでした……」


「そうだね。まだ、その組織が計画を実行する段階じゃないらしい。だから、こっちは情報をつかみつつ、ウェル姉を探しているんだ」


「私とウェルール様は、会った事があるのでしょうか?」


「会った事があるはずだよ。だって、会っていなきゃ、神印は押されない。神の名前は剥奪されているから、君の知り合いにいると思う。ウェル姉は、人間性見ないと判断しないから」


「うーん……。名前が違って、私の知り合い……」


「まぁ、君が世界の管理人になるんだったら、ウェル姉も多分来るよ。唯一使える通信で、君の事を心配していたから」


「わかりました。そうそう、名前と髪の色、瞳の色を変えたいのですが」


「うん。何色にする?」


「今の髪を赤色から金色に、瞳の色を緑色から紫に変えたいです。名前は、ルーナでよろしくお願いします」


「OK。よいしょっと」


「ありがとうございます」


「世界の管理人のガイドブック、食料、水、食料の取り方、パシファティの使い方ブック……。とりあえず、必要な物を揃えたよ。アイテムボックスみたいな空間は、パシファティでも作れるはずだ。あと、これ」


「これは?」


「それは、困っている生き物や自然にかけると人になるんだ。1人じゃなくても大丈夫になったら、使うと良い。まぁ、人になる素質があるとその液体を手に持って鑑定魔法を使えば、光るからそこにかけてみたら、無駄遣いしないで済む」


「何から何までありがとうございます。そう言えば、私がこれから行く世界の名前は、なんて言う名前の世界なんですか?」


「リーヴェルシュタール。自然溢れる豊かな世界。君用に家は1軒建ててある。思う存分楽しんできて」



 ありがとうございます。フェラール様。リーヴェルシュタール。これからよろしく。



「ルーナ、君の人生に幸あれ」




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 ‪ஐ‬用語解説‪ஐ‬

 ※1魔鳥箱 郵便ポスト。鳴いていると手紙がある。

 ※2白い紙 神様からの手紙が白。通常郵便物は、黄色い紙。

 ※3神様の〜 神様信仰が賑わっている世界で起きる現象。神様の手紙が届いた者はとても居心地が良い世界に連れて行かれる。

 ※4空白の〜 ※3の居心地が良い場所。正確に言うなら、来た人に居心地が良いと思われる空間を作り出している。

 ※5神印 神様のお気に入りの人だと言う印。神同士しか見えない。加護とは違って、加護を与える事ができない神でも、押せる。

 ※6パシファティ 異能力。大体1人1個は使える。最大3個までもらえる。

 ※7協会の〜 パシファティ協会のパシファティがどのくらい使えるかの測定。A〜Eが判断基準。シークレットでも、同じ判定が出る。Aが1番早く発現する。パシファティがない人はF判定が出る。

 ※8シークレット パシファティの発現を遅くする。しかし、まれに突然の出来事でパシファティが覚醒する。シークレットだった場合は、協会で何度か見てもらうと確実。

 ※9神水晶 元々神様がパシファティを決めるのに使っていた。しかし、パシファティがかなり偏りやすいので、パシファティの判定をする用途にした事で解決できた。

 ※10世界連合 自分達の住んでいる世界と別の世界が見つかってから、50年後に観光世界や、商業世界などを作った事で、世界1つ1つのルールが覚えにくい人が増えて来たので、最低限守って欲しいルールを決めたり、戦争が始まった世界をいち早く止めたりするために作られた連合。正式名称は、異世界達を豊かにする連合。

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