第2話 くくり姫

くくり姫は凄く不幸な女神だ。


もし幸せな神なら、僕は普通にあの女神からジョブやチートを貰った。


今のくくり姫には僕しか居ない...もう会う事は無いけど...どうしても僕はくくり姫を捨てられなかった。



くくり姫は生贄から生まれた女神だ。


日本の神には案外禄でも無い神が居る。


神話の中にも生贄を求める神が沢山いるのは知っていると思う。


そういうのを悪神というのだが...なかにはその悪神の慰み者になる為に生まれた神もいる。


それが「くくり姫」だった。


簡単に言うと、この村を守ってくれている悪神は、村の繁栄を約束する代わりに、若い娘を生贄に求めた。


この悪神は、生贄を散々嬲り者にして...飽きると食べてしまうという最悪の神だった。


沢山の生贄を悪神に納め続けていたが...ある時、高名な術師が訪れた時に、村人は娘を生贄にしない方法が無いか相談をした。


その術師が考えた方法は、今迄慰み者にされて死んでいった娘達の魂から...女神を作り出す..そういう術だった。


生まれた時から、悪神の慰み者になるだけの存在...それがくくり姫だった。



「私は何で此処にいるのでしょうか?」



「何だ、これが俺への生贄か? これはまた、随分器量よしを寄こしたもんだ..」



「いきなり、何をするのですか...」


「お前はこういう事をする為に送られて来たんだ」



「嫌、嫌、嫌いやあああああああああああっ」



これがどれだけの地獄か解るか?


生まれて直ぐ..それから犯され続ける..それだけの存在。



悪神の祠の傍にある小さな祠...それが彼女を縛り付けた。


神と言われながらも...ただ犯されるだけの存在。



「嫌、嫌、嫌ああああああああっ」



彼女がどれだけ悲惨かは誰も知らない...


生贄の代わりにただただ、犯され嬲られる存在...それが「くくり姫」だった。


毎日の様に犯され嬲られるだけの存在...神と言いながら何の力も無い存在...それが「くくり姫」だった。




これがくくり姫に僕が告白した時に聞いた話だった。


「私はね、神と言われながらも、こんな汚れた存在なのよ? それでも好きなの?」


その顔は、凄く寂しそうに見えた。


それでも好きだと言うと...消え入りそうな声で...


「本当に馬鹿ね...大体、私半透明だから触れないでしょう? それにもう神格も無くなってきているから消滅するのも時間の問題よ!」


「解っているよ」


悪神は善神に討伐された...その後はくくり姫を哀れと思った村人は供物を捧げ続けたという...だが村は過疎化が進み、今や廃村。


誰も拝む人が居なくなり...くくり姫は消え入る寸前だった。



「だったら、貴方はそうね神主兼、氏子になりなさい...まぁ残り僅かだけど...もう私を祭る人は他に居ないから...それで私の全てを手に入れた事になるわよ...どうかな」



神と人間は結婚なんて出来ない...それにくくり姫に触る事は出来ない、神と人間そう考えたら、これは受け入れて貰えた、そういう事だろう。





「そうだね、そうするよ」


「解ってくれて、ありがとう」



くくり姫は半透明で幽霊の様にしか見えない...もう居なくなる日も近いのかも知れない。


だけど、それまでは僕は傍にいる...そう決めたんだ。


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