りょこう

 あのね。

 からかいすぎたお詫びだからって、ここまでする?

 うそだよね。

 絶対、すごく前から計画してたよね?


 お互い、ようやくまとまった休みに入ったから遠出しようって言われた時、びっくりしたんだよ?

 ホテルとかどうするの? って聞いたら、空きがあったところ取れたとか言われて、信じちゃったけど。


 なんだかいつものキミらしくなくて、強引な気がしたんだよ。

 そしたら、まさかこんな素敵なところに連れて来てくれるなんて……。

 嬉しすぎて泣きそうになったのは、秘密。


 露天風呂、気持ちよかったね。

 目の前の大自然に、つい、ぼーっと見入っちゃった。

 恥ずかしいのも忘れちゃうくらい、キミと一緒に眺めることができて嬉しかった。


 料理もね、見た目もすごくて、器自体も素敵だった。

 どれもこれも美味しくて、食べる度に騒いじゃったね。

 部屋での食事にしてくれて、ありがとう。

 だから、ゆっくり味わえたことに感謝してます。

 それに、キミとのんびり食べるのが好きだから。


 あと、手ぬぐい作りがとっても楽しかった!

 わたしに絵心なんてないけど、描く時のコツをプロの人に教えてもらえたから、楽しく描けたんだよ?

 あんなにたくさんの色を使って塗るのにも、夢中になっちゃった。

 それに、キミのためにって思ったから、頑張ってみました。


 渡した時、キミはすごく喜んでくれたよね。

 あの時の顔、写真に撮りたいくらい好き。

 だからね、そんなキミを見てたわたしの方が喜んでたの、知らないでしょ?

 顔にも出さなかったしね。

 わたしもキミが作ってくれた手ぬぐい、大切にするね。


 でも。

 でもね。

 あの、宝石箱みたいなお花と、ケーキ。

 びっくりしたの、本当に。

 もうすぐ同棲して四年になるから、その前祝いにしたくてさっき頼んだって、言われて。

 こんなの、すぐに頼めないよ。

 そんなの、わたしにだってわかるよ。


 だから、怖くなった。

 

 すごく大切にしてくれるのは、嬉しい。

 それはこの関係だから、なんだと思う。

 だからきっと、わたしの本音を知ったら、キミの気持ちは変わっちゃう。

 キミはわたしのこと、重荷に感じると思う。


 だから、伝える。

 キミの時間をこれ以上、無駄にしないように。


 そのために、今から、予行練習です。

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