第2話

「どけどけーっ」

 叫びながらサンダーが突進していく。木の枝を削って作った剣で、敵の蟻たちを蹴散らしていた。白い体にとげとげの傘。見た目がとにかくかっこいいシロオニタケである。

「ちょっと、自分勝手だね。まあ、おいらも頑張るよ」

 スターがくるくると回ると、そこから光があふれ出す。蟻たちの目をくらまし、そして体から自由を奪っていく。スターは光魔法を使うツチグリだ。

「ボクはオーフレイム様を絶対にお守りします」

 そう言って盾を構えているのはウズラ。丸い顔がチャーミングなタマゴダケだ。時々僕らのところまでたどり着く蟻たちの攻撃をことごとく防いでいる。

「私も活躍を見せなくてはならないわ!」

 武器を持たないが、打撃で相手を倒していくイリーは、黄色くて大きな傘が特徴的なハナガサタケだ。難敵は捕まえた後に関節技で仕留めることもある。物腰は柔らかいがかなりの武闘派である。

 キノコ者たちは、あっという間に敵の拠点をつぶしてしまった。

「はっはっは、やったぜ!」

 サンダーは頭が地面につきそうなほどふんぞり返っている。

「気を付けてくれよ。僕はそんなに、頑張れないんだ」

 今回は圧勝だったからいいものの、敵の本陣はこんなものではない。そして僕は、一日に使える魔法の量が限られている。

 キノコ者たちは、僕がキノコから生み出した。基本的には自立しているのだけれど、手足や思考力を維持するためには定期的に僕の魔力を注ぎ込まなければならない。もし瀕死の怪我を負ってしまったなら、一日に治せるのは一人が限界だ。

 そして、奪った拠点は維持しなければならない。

「ここを守る仲間たちを作るよ」

「ええっ、私たち以外にですか?」

 イリーがくねくねとしながら困惑した表情を見せる。

「簡易的な自動兵だよ。君たちみたいなキノコ者はそうそうは作れない」

「そうなんですね」

 ほっとしたようだ。

 キノコ者を操り動かすキノコ魔法は、それ自体がとても難しい。その中でもサンダーたちのような人格を持ったキノコ者を作るのは、とても大変な魔法なのだ。何体もの失敗の末に、ようやく四人を生み出すことができた。

 最高の四人だ。これなら、グランの女王を救えるかもしれない。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る