第3話

ビショビショだ........。

雨の中俺は傘も持たずに下校していた。 


傘をさしている人らがいる中、1人だけ刺していなくて浮いているのだろう。

恥ずかしくはあるが傘がないのだからしょうがない。


学校から比較的近いが、歩くのでそれなりの時間はかかる。それもあり、体に浴びる雨の量はだんだんと多くなってくるわけで俺の体の体温が吸収されるのが分かる。

正直寒いし、クラブで疲れ切った俺の体は限界を迎えていた。


「はぁ............」

弱くて長いため息が出てしまう。

それもそうだろう、雨と疲労でもう最悪の日なのだから。


あーぁ.......こんなときに迎えにきたよ!なんて言ってくれる彼女とかいればなぁ。


まぁ俺になんかねぇよな、ごめんよみなさん俺の物語に女なんて出ないんですよ。冒頭に出た人いるじゃんって?あの人は知らない人ですよ。


それにあの人は今どこかですごいことを成し遂げてると思う。中学校でなんか意味わからん数式解いてたし。反対に俺は頭悪いし、あいつと同じ高校なわけが無い。


だめだ、あいつを思い出さないと決めたのに.......。

言っとくが俺はあいつが怖かった。何というか、普段は何ともないんだが俺のことになると気持ち悪くなる。


幼馴染として、中学まではそれなりに仲良かった。しかしあいつの態度が狂っていったのは中学の頃からだ。一日中付き纏われたり、俺が女子と話すとそれを妨げられたり挙句果てには、女子から変な噂されたり。


だから俺はそういうあいつの被害者らが誰もいないここの高校を選び、一人暮らしをしているというのもある。


あいつが狂い出して、その後俺の机、下駄箱、ロッカーに毎日ラブレターが置いてあった。

たまにブランクを挟み、もしかして俺にもあいつ以外から?を期待させられたりした。まぁこれは俺のせいだけど。


そんなことがたくさんあったのだが、新しい所というのもおり、高校デビューしたから新しく女の子が出来た!なんて嬉しいのもなく、皆様には残念な報告ですが俺のこの物語にはヒロインなんてでませんので........どうしよう自分で言ってて悲しくなってきた。


まぁ、だから男の子が主人公で女の子もでないしょうもない日常を書いている小説みたいになるんじゃないんでしょうかね?知らんけど。


トホホ..........。

メンタルも徐々に自己嫌悪によって削れて行き、身体はずぶ濡れ........。


アスファルトに溜まった水溜りを踏んでしまい、靴の中に水が入り靴下まで浸透してきて気持ち悪い。


黙々と歩いていたが、急に頭が痛くなり寒気も覚えるようになってきた。風邪をひいてしまったと自覚した俺だが、助けを呼ぶような人もいず、どうにかマンション、自分の家に帰ってきた。


見慣れた高級で豪華なロビーをぼんやりとした視界で通り廊下に入った。


雨だからだろうか、人通りが少なく誰ともすれ違わない。自分の部屋は廊下の中央くらいの部屋だ。


「やっとだ.........」


頭がボーッとして、痛くて体は疲れて.....俺はすぐにベットに飛び込みたかった。

自分の部屋の番号を確認するのも億劫になる程疲労感があった。


鞄の横チャックを開けて鍵を取り出す。

キーケースに入れた大切な自分の部屋の鍵だ。


それを差し込んだのだが.........


「あれ、」


回しても、解除する音がなかったのでもしかするとと思い鍵を引っこ抜きドアを少し引いてみた。


すると、ガチャッと音がしてそのままなんの遮ぎもなく引くことができた。

もしかして、鍵をかけるのを忘れた?のかもしれない。いや、しっかりとやったはず........。


そのままドアを引き中を見ても自分の部屋の景色が映ってもしかすると他の部屋なのかもしれないという憶測は消えた。


まぁいいやそんなことより体の癒しが......

俺は速攻に寝室で濡れた制服からいつものパジャマを着て髪をささっとドライヤーで乾かす。

そしてやったの思いで、ベットに飛び込んだ。


「はぁ.....疲れた。。。」


俺はそれ以降口を開けなかった。


♡♢


「ただいまぁ.......ふふっあーちゃんは毎日誰もいない部屋に向かってこう言うよね.....可愛いぃ。私も真似して毎日言ってるけどやっぱり、あーちゃんと同じってなんだか幸せ」


濡れた傘を置き、部屋に入ってくる女が1人。

頬を赤くしながら玄関から靴を脱ぎ部屋を上る。


女はピンクの髪にグレーでしましまのミニスカートに、間から白のシャツが見える栗色のカーディガンを着ていた。


「今日はあーちゃんの部屋どんな音がするのかなぁ」


彼女が隣の部屋の音を聞くために(?)隣の部屋から1番距離が近い寝室へと向かう。

これが彼女の日課らしい。


そのために寝室の部屋のドアを開けた。

隣人の彼と家具の種類も、配置も色も全部同じにしたこの家。

彼女は途端に発狂しだした。


「えっ......なんであーちゃんがここに.....寝顔可愛いぃっじゃなくて!寝息美味しそうっじゃなくて!


「って私のパジャマも着てるじゃん......」


大好きな隣人と同じ彼女のパジャマを、その本人が着用している。

なんとカオスな状況だろう。


「と、とりあえず幻覚.....だよね?今日外行ったもんね私....」


zzz


独り言を呟いている彼女を気にすることもなく寝ている蒼。


「幻覚でも、、あーちゃんと寝るの夢だったし.....いいよね」


明日の朝には消えちゃうから、と彼女はギュッと抱きしめて彼の夢を見た。



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