時雨の誕生日

 11月も半ば、冬もすぐそこまで来ている。そんな日のいつもの帰り道、今日も心音さんと一緒だ。


「時雨さ、そろそろ誕生日でしょ?」

「うん。休日だから叔母さんと軽いパーティーでもしよっかなって。心音さんも来る?」

「いいの? ありがとう時雨」

「もちろん! 是非来て来て!」


 ここ数年は一人で寂しい誕生日だったけど、今年は楽しい誕生日になりそう!




「お邪魔します」

「おはよう心音さん!」

「いらっしゃ~い心音ちゃん。どうぞ入って入って」


 叔母さんと二人で心音さんを迎え入れる。心音さんが家に上がった後、一つのタッパーを取り出した。


「あの、プレゼント代わりと言ってはなんだけど、手作りのクッキーを作って来たんだ。よかったら三人で食べない?」

「あ、ありがとう心音さん! すっごく嬉しい!」

「あら、よくできた友達ね~」

「ありがとうございます」

「……違うよ! 心音さんは彼女だよ!」


 友達として振る舞う心音さんを見てもやもやしてしまい、思わず本当の事を喋ってしまった。だ、大丈夫かな。


「し、時雨……」

「……」

「あら~」

「あ、あの眞冬さん……」

「ああ、気にしなくていいよ~別に。時雨ちゃんにはいつも寂しい思いさせてたからね。最近は心音ちゃんがいてくれるからかな、いつもより時雨ちゃん元気なのよ。友達じゃなくて彼女だったのは驚いたけど、時雨ちゃんのことを大事にしてくれるなら全然問題ないよ~」

「……勿論です。 時雨の事は大切に思っています」

「それならよし! ケーキも作ってるから、クッキーと一緒に三人で食べましょ~」




「それじゃあ改めまして」

「「時雨(ちゃん)、誕生日おめでとう!」」

「二人ともありがとう!」


 叔母さんのケーキも心音さんのクッキーも美味しそうだ。どっちを食べるか迷ったが、心音さんのクッキーを一つ口に入れる。


「お、美味しい!」

「ホント? 良かった。上手く作れてて。 あ、眞冬さん。ケーキも美味しいです」

「あら、ありがとう~」


 表面がきめ細やかでチョコレートとバターの香りと甘さがしてサクサク感のあるクッキーは本当に美味しい。


「心音さん料理上手なんだね!」

「そ、そんなことないよ……これ作るのにもかなり時間かかったし」

「私、心音さんの料理、毎日食べたいなぁ……」

「し、時雨! それちょっと違う意味になるから!」

「あらあら~大学から同棲とかしちゃう?」

「眞冬さんまでからかわないでください……」


 今年の誕生日は、予想通りここ数年で一番楽しいものになった。二人には感謝してもしきれないや。

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