保健室

 時を止められる。一体どういうことなのだろうか。おおよそ理解できない心の声を聞いた私は戸惑う。戸惑いと驚きの表情に気付いた霜里さんが声をかけてくる。


「顔悪いように見えるけど大丈夫? まだ頭痛いの……?」

「なんでもないよ。大丈夫大丈夫」

「ならいいけど……痛いならちゃんと言ってね」


 霜里さんは席を立ちベッドを離れ、保健室の先生と会話を始めた。私自身が他人とは違って心を読める力を持っているので霜里さんが時を止められる力を持っているということに少なくとも他の普通の人よりはすんなりと受け止めることはできたのではないだろうか……いや勝手に心を覗いて知っただけだが。


「五十内さん。五十内さんのお母さんが迎えに来てくれるって」

「わかった。ありがとう霜里さん」


 そう言って彼女はまたベッドの横の椅子に座った。先程の事実が気になった私は彼女の心の少し奥まで見てみることにした。


 


 霜里さんの心の少し奥まで読んだ結果、力はある日突然使えるようになってて、その力を使って人助けなどをしたりしてることを知った。


「五十内さん、なんでずっとこっち見てるの……?」

「あぁごめん。ボーっとしてた」


 若干頬が赤くなっていた彼女にそう言われ、これ以上の詮索はやめることにした。それにこれ以上の力の行使は今の状態ではちょっときついし。

 それにしても、時を止めるなんて使い方によってはやりたい放題できる力を持っていながら、その力を悪事には使わず他人のために使う彼女はどれだけ優しい人、お人よしなのだろうか。彼女のことが更に気になってきた。


「ふぁ……」


 サッカーボールの件や今の力の行使でただでさえ体育の授業で疲れていたのに余計に疲れた。眠気で軽い欠伸が出る。


「ごめん、疲れて眠くなってきた。親が来るまで少し寝ることにする。様子見てくれてありがとう。私はもう大丈夫だしそろそろ家に帰ったら?」

「あ、私別に早く帰りたいとかはないから気にしなくていいよ! それに今家に帰っても誰も居ないし……」


 まずい、地雷を踏んでしまっただろうか、反省して目を瞑り、親が来るまでゆっくり休むことにした。


♢♢♢


 目を瞑った五十内さんはあっという間に眠ってしまった。あとは先生と五十内さんの親御さんに任せて帰宅しようと思った時、ふと彼女の寝顔が目に入る。ロングヘアーで整った顔立ちの彼女はとても綺麗であり、そんな彼女の寝顔は美しさと少しの可愛らしさがある。


「んぅ……」

 

 そんな事を考えていたその時、仰向けから横向きに姿勢を変えた五十内さんの片手が私の制服の裾をつまんで引っ張られる。軽く驚いたが彼女はすぐに手を放した。

 こういうのをギャップと言うのだったっけか、綺麗な彼女が思わず出した可愛い仕草に思わず心がキュッとなり、ドキドキしてきた。この気持ちはいったい何と言うのだろう……




 あの後先生に挨拶して学校を出て、家への帰り道。私はさっきの出来事を思い出してしまう。とっても綺麗で、可愛いところもあった五十内さん。彼女と仲良くなれたらいいなと思う。あと、彼女の事を考えていると、ちょっとドキドキもした。

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