02 追憶その1~アイリスとひなた~
【Side アイリス】
私、アイリス・ガイアブルクは、一週間前の事を思い出していた。
ガルタイト国が魔王を倒すために勇者召喚を行った日だ。
昼頃だったかな……、遠く見える王城から青い光が発したのを見た。
この件をある所に連絡した後、王城に向かった時だった。
◇◇◇◇◇
「ホントにあの国は……! 国際世論から冷たい目で見られてるはずなのに! いや、知っててあえて……? 魔族への憎しみを優先しているから……!!」
私が住んでいる別荘は、ガルタイト国領内に構えている。
ある所からの依頼で、ガルタイト国を監視するためだ。
色んな魔道具や魔術書があるのもいざという時のためだったのだが、それを行使する時がきたのだ。
ガルタイト国は、他の国との思想が違うため、世界から孤立している状態にある。
それは魔族に関する事だった。
他の国は、魔族との友好な関係を常時築いているが、悪い魔族もいる。
そんな悪い魔族に家族を殺されたとされる当時のガルタイト王族は、魔族は殲滅すべしと主張してきたのだ。
しかし、その魔族は、魔王によって処刑されており、各国にも謝罪していたのだ。
それもあってか、他国はガルタイト国の言い分に批判した。
あまりにも独り善がりだと。
それでも意思を曲げなかったガルタイト国は、他国から次第に奇異の目で見られることになり、果てには国際連合から強制排除されたとか。
そこからガルタイト国は打倒魔王とガルタイト国中心の力による世界統制を目指すようになった。
「私の国は強固だからいいけど、他の魔族共存国のいくつかはガルタイト国に占領されたし……、これ以上好きにはさせられない」
そう、ガルタイト国は、他国に攻め入り、占領するくらいの兵力はあったのだ。
とはいえそれでも魔王を倒すには戦力が足りないはず。
もしかして、あの青い光は……という懸念を抱きながらおよそ2、3時間は森の中を走っていた時だった。
(気配……!?)
何かの気配を感じた。
人が来る……、盗賊かも知れない……。
そう警戒態勢をとったその直後だった。
「はぁはぁ……」
ガサガサという音を立てて、息を荒げた女性が現れた。
その女性は、男性をお姫様抱っこをしたままここまで走って来ていたのだろうか。
でも、何かがおかしい。
衣装が私たちの知るような衣装ではない。
見た感じ学校の制服なのだろうけど、少なくとも私の知る限りでは紺色基調の制服は見たことがない。
それに男性の方は呼吸はしているが意識がないように見えた。
「そこのお姉ちゃん、大丈夫!?」
私は思わず、その女性に声を掛けた。
今の様子をどうしても放っておけなかったのだ。
「え、私達を助けてくれるの!?」
お姉ちゃんのほうは驚きを隠せないでいた。
多分、私を追手だと思っていたんだろう。
「私はガルタイト国の人じゃないから大丈夫。 とにかく助けないと、そのお兄ちゃん、意識がないんでしょう?」
「そ、そうなんだよ! 彼が何かされたみたいで急に意識がなくなったんだよ……。 それで……」
「とにかく今は私の別荘に行こう! 転移するよ!」
そう言って、私はお姉ちゃんの傍で転移アイテムを使った。 そしてすぐに私の別荘の二つのベッドがある部屋に転移した。
「こ、これは……、いきなり景色が……。 さすが異世界というべきか……」
異世界。
私の別荘に転移した直後に、そのお姉ちゃんはそう言った。
私としてはさらに気になる事項が増えた感じだが、今はお兄ちゃんの方を何とかしないとだめだ。
「そのお兄ちゃんをそこのベッドに寝かせて」
お姉ちゃんはそれに従い、お兄ちゃんをベッドに乗せた。 すぐさま、診察魔法を掛ける。
「強力な睡眠系の呪いが掛かってるね……。 解呪には3日かかるけどやってみるよ。 幸い、命には別状がないしね」
「はぁ、よかったぁ……」
お姉ちゃんはそれを聞いて安堵した。
「安心したらしたくなってきた……。 トイレはどこに?」
「あ、この部屋出て右にあるよ」
「ありがとう、借りるね!」
安心したことで催してしまったお姉ちゃんは、足早にトイレへ向かっていた。
その間に、私はSSクラスの解呪の札を眠っているお兄ちゃんの胸付近に張り付ける。
この解呪の札は最高級クラスの力を持つが、診察魔法の結果、それでも解呪には3日かかるのだ。
その間、定期的に看病をしなければいけない。
そうしてるうちに、お姉ちゃんがトイレから戻ってきた。
「ごめん、色々と迷惑を掛けて。 私達、ちょっと訳ありで逃げていたんだよ」
「訳ありなんだ……。 お話、してくれるかな?」
「うん、信じられない事もあるかもしれないけど話すよ」
「あ、私はアイリス・ガイアブルクだよ。お姉ちゃんは?」
「私は
衝撃的な内容だった。
お兄ちゃんとひなたお姉ちゃんはこの世界の人間じゃなく、異世界からここに召喚されたと言っていた。
ひなたお姉ちゃんは、さらに話を続ける。
「飛ばされた先はガルタイト国の王城。 そこの国王が、私やそこの彼を含めた合計36人のクラスメイトと一人の担任の先生を魔王を倒すための戦力として召喚したんだ」
聞けば聞くほど怒りを通り越して呆れてくる。
ガルタイトの王族は、正確にはガルタイトの国王は魔族殲滅主義をしっかり掲げていたのだ。
「それで、なんでお兄ちゃんは睡眠系の呪いを掛けられて、ひなたお姉ちゃんはお兄ちゃんを抱えて逃げていたの?」
「それを話すには、ますガルタイト国内の私たちの状況から話す必要があるね」
そう言って、ひなたお姉ちゃんはゆっくりと当時の事について語り始めた。
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