8月27日

 8月27日、今日も僕はオオバさんがいる廃墟へ向かう。だけど、廃墟へ向かう僕の心はいつもとは違う。これまではあの魅惑的な肢体やムチムチとした肉付きのよさ、脳にまで染みてくる匂いといった肉欲によって引き寄せられて来ていたが、少しだけ見せてくれたオオバさんの弱さと辛さに僕は心を掴まれてオオバさんをちゃんと一人の女性として愛しているからこそ会いに行くのだ。

そんな風に少しだけ成熟出来たからか相変わらず両親は喧嘩中で、若宮さんが部活動に来ないままなのは少し気がかりだと思えるようになり、若宮さんに次に会えたらしっかりと謝ろうと考えていた。


「……だけど、誰も会えてないみたいだし、僕が会うのも難しいよな。そもそも向こうから誘ってきたとはいえ、酷い事をしたのは僕だから向こうが会いたがらないだろうし……」


 相手の事も考えずにひたすら相手の肉体を貪る事ばかりだったのをオオバさんが許してくれたのは、オオバさん自身が僕なんかよりもずっと成熟した存在だったからでそれを同年代でまったく経験のない若宮さんにも求めたのはやはり酷だった。

それに今さら気づいたって遅いけど、どうにか方法を考えた上で若宮さんには会った方が良いとは思えていた。手遅れになってしまう前に一度会ってしっかりと謝るのだ。

そんな事を考えながら歩く事十数分、僕はいつものようにオオバさんが住む廃墟に到着し、縁側を覗き込んだ。そこには変わらずオオバさんがおり、少し胸元が緩い白い服を着て穏やかな顔をしていた。


「オオバさん」

「……いらっしゃい、青志く──あら、少し大人っぽくなった?」

「え、そうですか?」


 そういえば、今日の部活動の時も男子の部員達からなんだか少し変わったように見えると言われたし、女子からも少しかっこよくなったかもしれないと言われていた。

自分的にはまだまだ子供だと思うけど、やはりこの一ヶ月間で少しだけ成熟出来ているのかもしれない。


「……でも、それはオオバさんのお陰ですよ。オオバさんと出会えて経験を積んできたから僕は大人っぽく見えるんだと思います」

「その経験、だいぶジャンルが偏ってる気がするけどね」

「う……」

「それじゃあ、今日も経験を積んでいく?」


 そう言いながらオオバさんが胸元をチラリと見せた姿に喉をゴクリと鳴らして頷いた後、僕は縁側に上がってそのまま和室へと入った。

いつもなら破れ障子を閉めていたけど、不思議と今日は閉めずにいて、オオバさんも特に何も言わなかったから、僕は障子が開け放された状態で愛しいオオバさんの肉体を味わっていった。

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