8月20日

 8月20日、夏休みの2/3が終わった今日も僕はオオバさんに会いたくてあの廃墟へ向かう。ただ、今日に関してはもう一つ理由がある。両親が最近喧嘩ばかりしてるのだ。

以前、オオバさんにも話したが、ウチの両親はとても仲が良い。新婚ホヤホヤの夫婦にありがちな何かにつけてキスをしてみたり理由もなくベタついたりするような事はないが、お互いの事を思い遣りながら仲良く暮らしているし、なんだったら夜に激しく愛し合う声も幾度か聞いた事がある。

だけど、ここ最近はお互いに相手の言動に一々イラついてしまっているようで、かける言葉も暴言ばかりだ。そして、その理由は少し前から行方がわからない夏子叔母さんなのだという。

 僕がオオバさんを家に招いて熱くなっていたその数日、両親は母さんの実家に帰って夏子叔母さんを探していたが見つからず、父さんも数日は本当に心配していたが、やがてその内見つかるだろうという考えになったらしく、そっちで見かけなかったかという実家からの度重なる聞き取りと日々の家事、中々見つからない夏子叔母さんへの怒りでだいぶストレスが貯まっていたらしく、ついに先日それが爆発した。

しかし、父さんも仕事の疲れや夏子叔母さんが見つからない事による母さんの不安そうな顔に少しずつ苛立っていたらしく、それに対して言い返してしまい、二人の仲にはだいぶ大きな亀裂が入ってしまったのだった。

両親の仲が悪くなったのは子供として良い事ではないが、僕が何を言っても解決しないのはわかっているし、下手に巻き込まれたくないと思ったため、こうしてさっさと逃げてきたのだ。


「……このまま喧嘩していてはほしくないけど、僕には何も出来ないし、このまま早くオオバさんのところに行ってしまおう」


 独り言ちながら歩いていく事数十分、いつものようにオオバさんがいる廃墟に着くと、僕は縁側を覗いた。すると、そこにはいつものようにオオバさんがいたけれど、その横顔が何故か母さんに似ているような気がして、僕は首を傾げた。


「オオバさん」

「あら、青志君。どうしたの? そんな不思議そうな顔をして……」

「あ、いえ……オオバさんの横顔が少しウチの母さんに似てるように見えて……」

「……そう。青志君みたいに素晴らしい子を育てた人に似てるなんて光栄だわ」


 そう言うオオバさんの顔は柔らかい笑顔だったが、どこか目の奥に哀しみの色が見えた気がして、僕はオオバさんの事をギュッと抱き締めた。


「青志君……」

「……大丈夫です、僕がいますから」

「……ええ、ありがとう。さて、せっかく来てくれたし、今日も涼んでいって」

「はい」


 今日は服を脱ぎながら上がる気分じゃなかったからそのまま縁側に上がり、並んで和室に入ってからオオバさんは破れ障子を少し強めに閉めた。

その後、いつものようにオオバさんとの一時を過ごしたが、その日のオオバさんは何かを忘れようとするかのようにいつもとは違う様子を見せていて、激しいオオバさんの動きに何度も絶頂させられながらもその哀しそうな姿は僕の脳裏に残り続けていた。

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