8月15日

 8月15日、今日はオオバさんが帰ってしまう日だ。だから、僕は朝起きてからずっとオオバさんに抱きついていて、服越しでも伝わってくる脳にガツンと響くような蠱惑的な匂いを堪能していた。


「はあ……オオバさん、本当に良い匂いをしてますよね」

「そう? 自分ではわからないけど、そう言ってもらえて悪い気はしないわね。因みに、どんな匂いなの?」

「嗅いだ瞬間に脳内に直接響いてくるような感じで、嗅いでしばらくは頭がボーッとしてしまうようなそんな匂いです。果物的でもあればお菓子のような甘い感じでもあって……とにかくいつまでも嗅いでいたいような匂いなんです」

「なるほどね……まあ、いつまでも嗅がせてはあげられないけど、家に来てくれた時なら好きなだけ嗅いでくれても良いわよ。もっとも、もう色々なところの匂いも味も覚えられちゃってるだろうけどね」


 ウインクをしながら言うオオバさんの姿はあまりにも魅力的で、僕の顔は燃えたように熱くなった。そして、それと同時にオオバさんに甘えたくて仕方なくなり、僕は息を荒くしながらソファーに座るオオバさんに体を擦り付け始める。


「オオバさん……オオバさん……」

「あら、もう甘えん坊さんの時間?」

「だ、だって……もう今日で帰っちゃいますから、少しでもオオバさんと一緒にいたいんです……」

「ふふっ、私もよ。それじゃあそろそろ好きなように甘えて良いわ。ほら、行きましょう」

「は、はい……」


 熱い吐息を混じらせながら甘えきった声で言った後、僕は自分の部屋でオオバさんという甘く熟した濃厚な味わいの果実を貪る。

両親がいない分、オオバさんのあげる僕を讃えるような嬌声が部屋に響き渡り、僕とオオバさんから滲み出す汗の匂いが部屋の中に充満していくのが何とも嬉しくて、僕は夕方過ぎまでオオバさんのその豊満な身体を味わい、何度も何度もオオバさんに快楽へ導かれた。

そして、オオバさんとさよならのキスをして見送った後、僕が部屋の中に戻ると、オオバさんがいなくなった事でガランとしてしまった室内の様子に寂しさを感じたが、まだ残っているオオバさんの残り香が疲れていたはずの僕を興奮させ、僕は後片付けを後回しにして、オオバさんへの愛を必死になって叫んだ。

その夜、両親は暗い表情で帰ってきた。どうやら夏子叔母さんは見つからなかったようだが、僕にとってはどうでも良い事だった。何故なら、そんな顔すらあやふや人よりも大切な人が僕にはいて、僕以外とは愛し合わないという二人きりの秘密があるからだ。

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