第2話 片手

 条規は、夏見の両腕から出た〝妖魔〟と対峙した。

ポケットの妖刀〝みやび〟を取り出し、〝スイッチ〟をいれる。

スイッチとは、自分の念を〝雅〟に込め、つかしかない刀に念のやいばを作り出すことである。

〝雅〟は、あくまで、緊急用の携帯の妖刀である。

しかも、妖刀を使えるのは、ただ一振りのみである。一振りすれば、その妖刀は使命を終え、ただの金属になってしまうのである。

条規は、2体相手で、一振りしかできない現状に緊張した。

夏見は、全身を震わせ、びしょ濡れになり、床にしゃがみ込んでしまっている。

 「この匂い‥この匂い‥卑猥‥嫌」凍えた声を出す。

条規は、まず〝妖魔〟を説得しようと試みた

『なあ、アンタら、何故このにこだわるんだ?別の人でもかまわないだろ?なんなら俺でも

じゃなきゃ元居た場所へ帰れば?』

右手の妖魔が語り出す『俺たちは、この女のまっさらな女の生き血が欲しいんだ‥お前など‥カンケイナイ』

条規は『仕方ないか‥』そう言った瞬間に、一瞬で

右手の妖魔の間合いに入り、妖刀〝雅〟を振り下ろした!

呆気に取られた〝右手の妖魔〟は、一瞬で、一刀両断された!

 身体を維持できなくなった〝右手の妖魔〟はすぐに〝黒い霧〟になった。

それを見ていた〝左手の妖魔〟は、

『待て‥マテ‥』とたじろぎ、左手の中に戻っていった!

条規の手の〝雅〟は緑色の刃が消え、つかは見る見る輝きを失いサビてしまった。

条規は「仕方ない、応急処置だ」そう言ってポケットからシールのような、〝札〟を出し、夏見の左手に貼った。

 しゃがみ込んで震えていた夏見は、「匂いがしない‥」と正気をもどしつつあった。

 条規は「これでいいか?」と食堂のテーブルにあった〝味塩〟を身体に振りかけ、なにやら〝呪い〟を唱えた。

夏見は、起き上がり、椅子に戻ると条規に、

「叔父様‥聞いて欲しい話があります‥」 

と条規を見つめなきそうな顔をした。

 

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