第5話 外の世界へ

出発から2時間、調査隊はアマテラス郊外まで来ていた。

「しっかし、東区を抜けてから30分ちかくずっと田園風景って感じだな」

桝田がぼやいた。

「ホントですよね、これなら全然賄っていけそうに思えますけどね」

秀斗が桝田に賛同した。

「人口増加が鍵だな」

東海林が車に乗り込んで以来初めて開口した。

「人口増加?」

「ああ、18年前、アマテラスに避難した人は約6千万人と言われている。そして現在の人口は8千万人と言われている。そしてこの2千万人の増加は5年前くらいから急激にスピードを上げ始めた。このままのペースだとガラスドームがパンクするって計算だな」

東海林が説明した。そこに海老沼が続く。

「東海林の言うとおりだ、それに4区の外側全部が農業地帯ってわけではない、東区より外側は田んぼが広がっているが西の方なんかは工業地帯だからな」

「人口増加ねえ、あ、でも東海林さん随分と詳しいのね」

カレンがポカンとしながら言った。

「あ、ああ、少しその辺に興味があってな」

鼻を掻きながら東海林が返した。

「あともう少しでアマテラスを出るぞ」

海老沼が全員に呼びかけた。

「なんか急に工場だらけで騒がしくなったな」

桝田が言う。

「ホントね、何の工場かしら」

「アマテラスの外周1kmは気体生成工場になっている。外から空気は持ってこれないからな、ここで空気の浄化や足りない分の生成をしてる。」

海老沼が説明した。

「俺、家田舎ですけどこんなの見たことなかったです」

秀斗が言った。

「無理もないな、なにせこの工場一帯は政府直轄地区だからな、一般の立ち入りどころか政府の人間も立ち入りを許可されていないからな」

「じゃあここで働いてる人は何者なのよ」

カレンが尋ねる

「人なんかいないさ、ここではAIドローンがすべての作業をしている」

そうこうしている間に車は徐々にスピードを落とし、やがて停車した。

「アマテラスの出口についたぞ」

開門の申請に少しかかるとのことで調査隊員は下車を許可された。



アマテラスの最端。そこには高さ10メートルほどの無機質な四角いコンクリート製のトンネルがあった。トンネルはツタに覆われ周辺の草は膝の上辺りまで伸び切っていた。

「こんなふうになってるんですね、端っこって」

秀斗は興奮気味に言った。

「ね、私も一回通ってるはずだけど全然記憶にないわ」

カレンが続けた。

「18年ぶりか、懐かしいな」

桝田が言った。

「ああ、そうだな」

門をじっと見つめながら東海林は相槌を打った。その拳は強く握りしめられていた。


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