その28 探求者
「初めてアカネちゃんを見た時から、この綺麗な黒い髪には、白い○液が絶対に映えると思ったんだよ~」
エイプリルはうっとりとした表情で、アカネの黒髪を触りながら褒めて(?)来たが
「そんな褒められ方はイヤ~!!」
アカネは嬉しくもなんとも無いので、悲鳴をあげるとハルルに助けを求めた。
「助けて、ハルルちゃん! 変態さんに捕まっちゃったよ~!」
「あー、うん。知ってる」
ハルルはエイプリルが変態なのをしっており、付け加えると彼女が作品のことで興奮すると、彼女がその可愛らしい外見とは裏腹に、周りを気にせずに平気で淫語を口にする事も知っていた。
そのためハルルは、彼女が興奮する前にマイルームに連れてきたのだ。
そんな彼女は、アカネに今更ではあるがエイプリルの正体を教えることにした。
「その変態― じゃなかったエイプリルちゃんは、18禁エロ同人誌作家なんだよ」
「もう、二人共~ 変態なんて酷いよ~! 例え変態であったとしても、私は… 変態という名の探究者だよ~!」
すると、エイプリルは頬を膨らませて、怒った事を顕にしてくるが、その口調は丁寧かつ穏やかなである。そして、アカネにそのままもうひとつの自己紹介をしてきた。
「エイプリル改め18禁エロ同人誌作家の<
そう言って、彼女は丁寧にお辞儀をしてきた。
「どうもご丁寧に……」
淫語やエロい事を言わなければ、穏やかで礼儀正しい美少女なので、その様子に毒気を抜かれてしまい、アカネもつい反射的に挨拶を返してしまう。
「では、アカネちゃん。脱いで下さいね?」
しかし、彼女が再び発した言葉は、とても穏やかではなかった。
「そ、それは嫌だよ!」
アカネは必死に抵抗する。
「いいじゃないですか、減るものでもないんですし。それに、ここにいるのはみんな女の子なんですよ? 恥ずかしがる事はないと思いますけど?」
「そういう問題じゃないよ~! そもそもどうして、私が服を脱がないといけないんですか?」
「どうしてと言われましても…… そういう約束なので……?」
アカネの問いに、エイプリル― 否、四月朔日は不思議そうに首を傾げてくる。
「約束って誰と!?」
「ハルルちゃんですけど?」
エイプリルの口から諸悪の根源の名が告げられた。
すると、その諸悪の根源が説明を始める。
「実はね、アカネちゃん。そこの変態が”貴重な漫画の執筆時間を削ってまで、タンク役として参加して欲しかったら、ヒロインのモデルになってその分キャラデザの手間を省かせろ”言ってきたんだよ」
「酷い! 探求者だってば~。それに私そんな言い方してないよ~。“次の即売会まで時間がないから、一緒にゲームするなら、キャラを考える時間を省きたいから、ヒロインのモデルになって”って言ったんだよ~」
「同じようなもんじゃん!」
ハルルは思わず突っ込みを入れた。
「というわけで。アカネちゃん。エロ漫画のヒロインのモデルになってやってよ。漫画の中で汁まみれになってよ! 悔しいけど感じちゃうって言いなよ!」
「絶対にイヤだよ! そんな… エッチな漫画のヒロインのモデルなんて……」
アカネは顔を真っ赤にさせながら、断固拒否する姿勢をとる。
「でも、アカネちゃんは“タンク役勧誘のために一肌脱いで”という私のお願いに同意したじゃない? あの約束を反故にする気なの?!」
「本当に一肌脱ぐなんて、思わなかったからだよ!」
アカネは悲痛な声で叫ぶ。
「えー、そんな事言うんだ……。アカネちゃんって、意外と嘘つきなんだねぇ。アカネちゃんには、がっかりだよ……。有言実行もできないアカネちゃんに、アテナちゃんも失望して<偽善者は素晴らしい約束をする。約束を守る気がないからである>って言って、愛想尽かしちゃうかもねぇ……」
「アテナちゃんは、そんな名言みたいな事を言いながら、失望しないよ!?」
ハルルの適当な引用にアカネはツッコミを入れた。
※ドマンド・バーク(18世紀のイギリスの政治思想家、哲学者)の言葉より抜粋
「そんなにアテナちゃんという子の事が好きなんですね。それなら、アカネちゃんはその子をがっかりさせないように、頑張らないとですね」
「ううっ……」
エイプリルの言葉に、アカネは言葉を詰まらせる。
(確かに、私はアテナちゃんに良い格好をしたくて、名乗り出たというところもあるけど……。でも、こんな変態さんの相手は、やっぱり無理!)
アカネは心の中で葛藤していた。
「大丈夫ですよ? 名前はもちろん顔も少し変えるので、モデルがアカネちゃんだということは、恐らくわかりませんから。それでもダメですか?」
自分だと解らないならとアカネは思い直した。
確かに一度引き受けてしまった以上、ここで断るのはみんなに悪い気がしたからだ。
「…… わかったよ。引き受けるよ…」
「やった~!」
アカネの返答にエイプリルは歓喜の声をあげた。
「じゃあ、アカネさん。さっそく装備を脱いでください」
「はい…… 」
このゲームは、装備を外すと水着のようなインナーウェア姿になり、ボディラインが顕になってしまう。
「腰がきゅっと締っていて、手足は少し筋肉がついていて… スポーツをしているんですか? 胸もそこそこ大きいですし…… 中々いい身体していますね」
同性同士でなかったら、即セクハラで逮捕な言葉を言いながら、エイプリルはインナーウェア姿のアカネのスクリーンショットを撮り始める。
「ああ~、こんなエロい体を漫画の中とはいえ、好きにしていいと考えるだけで…… 私の心のチ○コはさっきからもうギンギンだよ~!」
エイプリルが感嘆のため息を漏らす。
「もう、やめて……」
アカネは、恥ずかしそうにしながら、スクリーンショットを撮られている。
「はい、オッケーです。ありがとうございました」
エイプリルが満足そうに微笑む。
撮影が終わるとアカネはその場に座り込み、涙目で俯いて何かブツブツ呟いているが聞こえない。
「エイプリルちゃん。こちらは約束を守ったんだから、そっちも守ってよね」
ハルルが念押しすると、エイプリルは力強く首肯する。
「もちろんだよ。早速今日から一緒にプレイしますか?」
「うん、よろしくね!」
ハルルは天使のような笑顔で返事をする。
こうして、タンク役のエイプリルを新しい仲間として、迎えることが出来た。
しかし、アカネのスクショを撮って最満足なエイプリルは気付いていなかった。
悪魔が笑みを浮かべながらその牙を剥こうとしていることに。
自分がハルルの悪辣な罠に掛かってしまったことに
次回へ続く
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