8月13日

 今日も10時直前に作業場に入ったら、昨日の半分くらいしかバイトがいなかった。右城さんは気にしてないようで淡々と点呼を取って作業に移った。

 しばらくしたら、ばらばらに3人遅刻してきた。特に注意されることもなく、すぐに作業をするように指示されていた。その他は昨日と同様水音と、作業着の人の足音と声のみ。 

 水面には自分すら映らない。照明の角度などの違いだろうか。と考え事をしていると手が止まっていた。肩が凝って、息が浅くなっている気がする。ぼーっとしていた。こっそり周囲の人を見たら、他にも手が止まってぼんやりしている人が居た。それに気づいているはずなのに、責任者の右城さんたちは何も言わない。

 後でまとめて日給からその分引かれていたら嫌だな。父母や幹人の顔を思い浮かべて苛立ちからやる気を奮起させた。

 昼休憩に入っておにぎりを夢中でむさぼり、顔を上げるとまた人が減っているような気がする。朝から来ていたはずのおばさんが青い顔で作業所から去って行くのが見えた。

 私はなんとか昼の作業も終え、とぼとぼとバス停に向かう。昨日と同じタイミングでまたナツから電話があった。

『お疲れ~』

 やけに声が高い。

「お疲れ。何か昨日より疲れた気がする」

『やっぱり? ちょっとおかしいよね!』

 いや、あんたは元気じゃん、と指摘するのも面倒だ。

『たぶんね~、私が思うにね~、あの汚れは血だと思うんだよね~』

 まあ、私もちょっとそんな気はしていた。しかもちょっと放置して固まった血。水であれだけ薄くなる汚れはたぶん間違いない。でも塩は何で使うんだろう。判らない。考えるのも面倒だ。

「バス来たから、切るよ」

 まだハイテンションで話しているナツに一方的に告げてスマホを切った。

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