終わりの見えない苦痛の中での自問自答

 キリスト教禁止令のあった江戸時代、拷問を受けるふたりの宣教師の物語。

 厳密には「ふたりの宣教師」とも、「ひとりの宣教師にあり得たふたつの過程と結果」とも読めるお話だと思うのですけれど、とにかく対比の形で描かれたお話です。
 かたや心が折れて棄教する人、かたや己の信仰に殉じた人。

 もうどっちが良いとか悪いとか、正しいとか不正解だとかいうお話でもない、本当にガチのやつでした。
 なにぶん歴史上に本当にあった宗教弾圧のお話であるため、生半な知識ではなかなかコメントも難しい……。

 物語そのものは宗教知識があまりなくても読めます。
 実は歴史やキリスト教に詳しくないと読み解けない要素があったりするのかもしれませんが、その辺は(知識のない自分には)わかりません。

 自分を彼らの立場に置き換えて、「もし自分がなんらかの思想信条によって拷問にあったら」と想像して読むもよし。
 拷問する側、あるいは「拷問を彼らに押し付けて平和に暮らすいち市民」の立場で眺めるもよし。

 いろいろと思うこと、考えちゃうことの尽きない作品です。
 センシティブというか、外に向けて気軽にあれこれ言えるような題材でなければこそ、自分の中で何度も咀嚼させられてしまったお話でした。