自分探しのアリスたち

七々瀬霖雨

序章

二人のアリス―伝承

 むかしむかし、ふたりのアリスがいました。

 二人は一人で、ふれあうと世界がわかれます。

 二人はじぶんの姿を見ることができません。

 二人は世界をそろえるために、

 どちらかを消し、

 どちらかを残さねばなりません。

 二人はそれをくりかえし、

 『じこ』をうみだしては、

 どちらかを消しつづけています。

 そんなふたりを認識できるのは――


 ――さあ、どこぞの誰でしょう?

 これは、行くあてすら知らぬ彼女たちの、

 無くした記憶と未来につなぐ物語。

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