エッセイ

昔話1 -作法

 昔々。

 あるところに。

 おじいさんとおばあさんがいました。

 おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。


「いつ、どこで、誰が、何を、どうして、どうなった」

 実にたった数行のオープニングで、 5W1Hあとは「どうなった」を残すのみ。

 これが昔話(の導入)です。


 すごいですよね。


 簡潔でわかりやすく、でも細かいところはぼやけていて頭のなかでいくらでも想像できる。


 刺激的ですよね。


 最後は、


「とっぴんぱらりのぷう」とか、「めでたしめでたし」とか。


 締めの言葉がエンディングとなり、はいおしまい。


 たったこれだけの作法で昔話は成立します。


「昔々」といってしまえば、もはや動物と人が対等であろうが、山よりも大きなダイダラボッチが出てこようが、「昔話だし」で笑って泣いて、それで納得、ファンタジー。「めでたしめでたし」で締めれば、どんな結末だろうが納得せざるを得ない強引さ。


 楽しめばいいのです。


 おおらかに、親しみ持って、日本の原風景を思い出しつつ。


 実は、それこそが昔話の作法です。

 そのためにこそ、前置きも締めもあるのですから。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る