追求

翌日、ドクターの治療により全快したゼノはルーメンの執務室に呼び出されていた。


「まあとりあえず茶ぁでものみや」


ルーメンは部屋の端に作られた座敷に正座するゼノの前にあるちゃぶ台に緑茶を置く。


「頂きます」


そう言ってゼノは緑茶をゆっくりと飲む。お茶の渋味と甘みが口に広がり、温かさが身体に染み渡って行くような感覚に陥る。


するとルーメンも自分の湯飲みに口をつけてふうっとため息をつく。そして部屋に設置された棚から資料のようなものを取り出してちゃぶ台の上に置く。


「今日呼び出したんはなぁ……ディヴィデの件……じゃなくてキミの事について聞かなくちゃならん事があってなぁ……」


(……ディヴィデ関連のことだろうか?)


「単刀直入に聞くわ、前置きとか最近の子嫌いやろ?」


そう言ってルーメンはこちらに目を向けて笑う。


(いきなり本題来るんかーい!)


「へ?え、ええ……まあ」


苦笑いしながらゼノはゆっくりと湯飲みを口に運ぶ。


「……キミ、正規の手順でOCOに入って無いやろ」


3秒程の沈黙が流れた後、ゼノは声を震わせて言う。


「…………ぼ、僕がですか!?」


(バレてるー!!!)


ルーメンは呆れたようにため息をつく。


「そう、キミや」


ルーメンはそう言うと一枚の紙を投げ渡して来る。そこにはゼノの顔写真が貼られて経歴のようなものと生年月日等が書かれてあった。


「……これは」


「隅から隅までずずいーと調べたんやで?これでも情報部門の責任者みたいなもんやしなあ……という事でキミの情報には不自然なところがあるんよ」


「不自然な事ですか……」


ゼノはその言葉を聞いて顔から血の気が引いて行くのが分かった。


(もしかして、なりすましバレちゃってる!?)


そんな様子のゼノを気にもとめずにルーメンは続ける。


「キミの出生記録は誰も見向きもしないような平凡な世界の普通の家で生まれたって事になっとる」


(そうなんだ……)


「まあ、それは置いといて問題はその先や……キミの案内された裂け目はきちーんとOCOの『門』に出るはずなんやけど」


ルーメンが指をパチンと鳴らすと、壁にゼノが死亡宣告男にOCOの廊下へと飛ばされた場面の映像が流れる。


「詳しく、説明して欲しくてなぁ……」


ルーメンからはいつもの飄々とした態度は無く、疑念の目つきでゼノの方を睨んでいた。

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