第一章 採用試験

ハズレ

まるで寝起きのように視界と意識がハッキリとしない。


「……し?……もし?」


誰かが呼んでいるようだ……


「もしもし?君」


目の前にいるのは知らない男だった。


「……はい?」


「君は死んだ、10数年の人生お疲れ様でした」


「は?」


視界がはっきりしてくるとそこは、異様な空間だった。


無限に続く天井に、それに続くように積み上げられた本がびっしりと詰まった本棚。


そして、目の前の高そうな木製の机の後ろに座っている暗がりの中でよく見えない謎の死亡宣告男。


「えっと……死んだ?僕が?なんで?」


「はい、死んだ、君が、事故で」


男は淡々と質問に対して返す。


「じゃあここは、天国?あなたは神様?」


「……困惑するのは分かる、だが君は……選ばれた」


男はそういうと椅子から立ち上がる。


「これから君にはある事をしてもらう」


この展開……知ってる。


死んだことは受け入れよう、うん。

なんか生きててもろくなこと無かった気がするし……


だけど!そう!これは……!


「異━」


世━━


「界━」


キタキタキタキター!チートスキルで無双しまくり!エルフとか獣人とか可愛い女の子に囲まれちゃう系の!あのー?


「転s「統制官になってもらう」


え?


「あの、神様……?トウセイカンって何語で転生って意味ですか?」


「日本語で統制する人を意味する、最近人手が足りてないからな」


んん?何かがおかしい。


こういうのは神様の手違いとかトラクターに引かれたと思ったショック死とか異世界人の召喚とかとかとかでチートスキルを……


そうだ!チートスキル!!


「神様ッ!!!チートスキr「なしだ」


え?


「与えないぞ」


「ど、どうして……でしょうか?」


「君には……」


こ、これは神でさえ渋るとんでもない理由があるのか……


「使いこなしてみせますよ、そのスキル!」


「いや、普通にそういう事出来ないぞ私、与えられない系の神だ」


神様でも出来ないことあるのね……


「何はともあれ、君は異世界統制官になって……」


「待って下さい!僕何の能力も無くて!そんなお力になる筈が……」


「大丈夫だ、何とかなる」


誰か言ってたな、神様の本質は気まぐれだって。

それが僕がたまたま当たっただけなのか、それともハズレの神様を引いてしまったのか……


「チェンジで……」(小声)


「何か言ったか?」


「いえ、何も。それで異世界統制官ってなんです?」


「それは、あちらで聞くといい」


「えぇ……」


男は時計を見るような仕草をすると手を前に出してこう呟く


「では、さらばだ」


その言葉と同時に体が後ろに引っ張られる感覚に襲われる。


「な、なに!?!」


後ろに顔を向けるとそこには、言葉では表現しにくいが、「世界の裂け目」という物に相応しい物に体が吸い込まれていた。


「死ぬ!死ぬやつですよ!神様ァ!!?」


「では」


男のその声を最後に僕は眩い光に包まれ、方向の感覚が無くなった。


これが、異世界統制官……?もしかして「世界を繋ぐエネルギーになってもらうヘッヘッヘッ」みたいな奴だったのか……?

あの神様悪神だったの……?



やばい、意識が……グボォオオオオオオ


何か強い衝撃を背中に感じた


「知らない天井だ……」


そこは某宇宙戦争映画のような白く近未来な天井だった。


そして、僕を何人かが見下ろしていた。




銃のような物を構えながら




あぁ、神様……またすぐにもう1度会えそうですね



その時は1発殴らせろ

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