みみなしほういち

玄栖佳純

第0夜

 昔々と言っても、源氏と平家が戦った平安時代の末から数百年くらい後、芳一ほういちという盲目の童がいた。

 芳一は身寄りもなく、無垢でとても愛らしかったので、将来を心配をした阿弥陀寺あみだじの和尚が引き取って寺に住まわせた。


 和尚は芳一を琵琶法師にしようとした。琵琶法師は琵琶という楽器を弾き、仏の教えを伝えたり、平曲という源氏と平家の戦い(源平合戦)の様子を人々に語ったりした。それに対して礼をもらう。上手ければ多くの人に喜ばれてたくさんもらえたし、下手ならもらえなかった。


 阿弥陀寺は山口県の壇ノ浦に近いところにあり、そこで亡くなった安徳天皇や平家の墓があったので、平曲を奏でる琵琶法師はおあつらえ向きだった。

 しかし、芳一は年の割に上手に琵琶を弾くことはできたが、それを聴いた人が心揺さぶられることはなかった。

「まあ、なんて可愛らしい」で終わることが多い。

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