清姫様はフェロモンだだ漏れで困ります
高峠美那
第1話 清姫の浄化の舞
シャン…。シャン…。
ほっそりとした白い手が頭上にあがると、
腰から後へに棚引かせた美しい
『鐘は
シャン…。シャン…。
『鐘の音は聞こえたか。 おまえ様へ聞こえたか…』
板を踏む音と、衣がこすれる音が交じりあい、
一時間に及ぶ『清姫の
「清姫祭り?」
ここ日高川町には、春の『紀州道成寺の祭り』と、日高川の河川敷きで開催される『清姫夏祭り』がある。
高校から日高に来た
まあ、春の祭りの方が有名だしな。
川沿いの賑やかな露店。連なった提灯。綿あめや焼きそばを抱えながら沢山の人が行き来している。
「なんや、誰か踊るん? おもろそうやん。俺らも見てこうや」
続く露店が開けた先に、
『今年のホウヅキは赤く染まったか。 おまえ様の業火と同じ色に染まったか…』
赤い舌が乾いた唇を湿らす。喉と胸は上下し、唄と舞で時を刻む程に、袴の裾からのぞく白い
見る者の五感が悩殺され、見物人から讃美のため息がもれた。
「キレイや!! めっちゃキレイや!」
わわわわっ!
あわてて神谷の口を塞ぐも、既に手遅れ。見物客の視線を集めた本人に、精一杯呆れ顔を見せながら、須崎はため息をついた。
「…おまえ〜」
「なん? ええなぁ、清姫様。めっちゃエロい。俺らより年上かなぁ? 美人やわ〜」
「…大阪人、声デカすぎ」
「俺、大阪ちゃうで? なあ、巫女の衣装の下って何着るん?」
「知るわけ無いだろう? 何か普通に下着を着てるんじゃないか?」
「そうかぁ? 俺、着てへんと思うわ。だって暑いし、セン見えんやろ?」
…セン?
神谷が自分の尻をなでてから、ここというように尻をポンと叩いた。
「肩から白い衣、脱ぎ落としてみ。めっちゃ滑らかな背中と雪見大福みたいな尻があるんよ!」
「……っ! おまえ想像力、凄すぎ!」
「そう? 俺ら健全な青少年やで? 須崎は好みとちゃうの?」
…これ見せられて、好きじゃないなんて言う男、いないだろ!
「もう! 黙って見てろよ!」
「ハイ、ハイ。須崎は硬派やな。俺はめっちゃ好きやわぁ。一目惚れかなぁ」
神谷の夢ごこちな顔。暗くて良かったと、頬の火照りを引き攣りながらごまかした須崎。
「やば…。俺も、からかえないな。これ、どうしろってんだよ…っ」
清姫が舞い終わるのはあと少し。神楽殿を囲んだ見物客が、須崎の独り言に気づく事は無かった。
この二ヶ月後、青少年達は思いもよらない形で清姫と再開を果たす事になる。
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