第2話 癒やしのお風呂~髪を洗ってくれるメイドさん~

美味しい夕食を食べ終えたあなたはメイドさんに言われるがままにお風呂に向かいました。


 浴槽にはすでにお湯が張られており、モクモクと湯気が上がっています。ちょうど良さそうな湯加減です。きっと、あなたが夕食を先に食べると思ってメイドさんが熱めに入れてくれたのでしょう。


 あなたはさっと身体を洗って風呂桶に溜めたお湯で身体を流します。

 カポン。風呂桶がタイルに当って小気味よい音が浴室に響きました。どこか間の抜けたその音を聞くと、お風呂に入ったのだという実感が湧きます。


 チャプン。足先からそっと湯船に入っていきます。じんわりほっこり、あなたの身体が温まっていきます。


 お風呂を上がったら何を飲もう。やっぱりお風呂上がりはコーヒー牛乳だろうか、いやいやフルーツ牛乳も捨てがたい。あなたはすっかり童心に帰ってお風呂上がりの飲み物をどうしようか考えます。


 決めました。あなたはお風呂上がりの飲み物をフルーツ牛乳にしました。そうと決まれば早速身体を洗ってお風呂を上がらないといけません。そう思って湯船から出たタイミングで、なんとメイドさんが浴室に入ってきてしまいました。


「ど、どうしたの!」

「ご主人様の髪を洗いにきました」

「ふ、服が濡れちゃうよ?」


 そうです、メイドさんはお風呂場だというのに先程と変わらないメイド服を着ていたのです。しかしあなたの心配は杞憂でした。


「大丈夫です。この服は防水ですから」

「そうなんだ」


 なんとも便利な世の中です。フリルの部分などどう見ても防水には思えませんが、メイドさんがそう言うならきっと防水なのでしょう。あなたは「そういうものか」と納得して椅子に座ります。


「髪から洗っていきますね。では、失礼します」

 あなたはメイドさんが洗いやすいように目を閉じて下を向きます。

 ジャー。シャワーから流れる水の音が響きます。徐々にその水温が頭に近づいてきます。


 パチャパチャパチャパチャ。遂にその時がきました。あなたの頭にシャワーから流れる水が優しくかかってきました。


「ん? シャワー弱めにかけてくれてる?」

「直接シャワーの水流を当てずに一度手に当ててから髪にかけてます。お嫌でしたか?」


 やっぱり、とあなたは思いました。普段頭にかかる水圧よりも優しい水の流れが心地よく感じられます。


「いや、むしろ新鮮な感じで気持ちいいよ。自分では出来ないからなあ」

「よかった。それでは、シャンプーしていきますね」


 シュコシュコ……クチュクチュクチュクチュ。メイドさんはシャンプーから出した液をそのまま髪につけるのではなく、一度手で泡立ててから髪につけていきます。


「かゆいところがあったら仰ってくださいね」

 シャコシャコシャコシャコ。まずは頭頂部から、ゆっくりと汚れを落とすように優しく頭皮をマッサージしていきます。


 コシュコシュコシュコシュ。頭頂部が終わると今度は側面です。汚れが溜まりがちな耳の裏もメイドさんしっかり優しく洗ってくれます。

 ゴシゴシゴシゴシ。比較的肌の頑丈な後ろはちょっとだけ力を入れて。


「気持ちいいなあ……」

「ふふっ、そう言っていただけると私も嬉しいです。さあ、流していきますね」


 ズズズ……パッ。メイドさんは頭の泡を集めてタイルに払いました。こうすることで、余分な泡がなくなり、しっかりと頭皮の中までシャンプーを洗い流せるのです。


 ジャー。再びシャワーの水温が聞こえてきます。メイドさんが一度手に当てることで水流が弱まった水が優しくシャンプーを流していきます。


「さあ、流し終わりましたよ。今拭いていきますからね」

 パンパンパン……ゴシゴシ、ふきふき。メイドさんがあなたの髪から水気を拭き取っていきます。


 何から何までメイドさんがやってくれます。身も心スッキリとしたあなたは、ダメ元でこんなお願いをしてみることにしました。


「お風呂上がったら髪も乾かしてくれないかな……なんて――」

「もちろんです」

「え、ほんとに? いいの?」

「はじめからそのつもりでしたよ?」


 人に髪を乾かしてもらうなんて美容室にでもいかないとやってもらえないことです。あなたはすっかりご主人様気分になって喜びを表現します。


「やったー!」

「私はご主人様のメイドなのですから、当然です」


 そう言って胸の前で両手を握ってポーズを取るメイドさんはとびきり可愛いのでした。

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