第16話 今後の方針



部屋の掃除をメイドさんに頼んだ。


血まみれの部屋を見たメイドさんはかなり驚いていたが『訓練していて怪我した』で話を誤魔化した。


俺の事を知っているのか、怪我していない理由は聞かれなかった…怪我してしないのは『回復魔法』でも使ったと勝手に思ったのかも知れない。


「それでリヒト様は、私を引き入れて何がしたいのですか? ここまで愛してくれたのですから…何か魂胆があるのですわね…王の暗殺でしょうか? それともやはり異世界人らしく魔王の討伐でしょうか? なんでもお手伝いしますわ…ですが私は対人は自信がありますが、対魔族は苦手ですわ」


まぁ、フルールの感じからしたらそうだな。


はっきり言ってしまえば…今の俺は『何も考えていない』


クラスの奴に復讐…それも考えたが、恐らくそんな事をする必要は無い。


全員がお気楽に考えているが…碌に戦闘経験も無い奴が訓練して戦いに駆り出されても…恐らく苦戦する。


それとなく、魔王と勇者パーティが戦った場合についてフルールに聞いたら、勝率は基本五分五分らしい。


しかも、今の魔王は先代勇者を倒した存在…勝率は更に低くなるだろう。


もし、彼奴らが親友なら『逃げろ』とアドバイスするが『どうでも良い奴』だ…そのまま戦って下さい…『勝てたら良いですね』位で丁度良い。


他の奴らも恐らくは長い年月で考えるなら、死ぬ可能性が高い。


だから『俺は助けもしないし、関わらない』それで良いような気がする。


「そうだな、此処を出たら基本的に自由に暮らせば良いんじゃないかな? 一応『勇者』という肩書きがあるから、全く魔族と戦わない訳にはいかないけど、それは最低限で良いと思う」


「それ…本気ですの?」


フルールが凄く驚いている。


普通に考えたら…こんな選択はしない。


俺には『あいつ等』に恨みがある。


折角、異世界に来たんだ『殺しても良いんじゃないか』そう思った。


此処には警察もないし、ビデオカメラも無いからまず捕まらない。


復讐し放題だ。


そう考えたが、必要ない。


だって、そんな事しなくても、彼らの人生は戦いの日々。


これより数年、安らぎは無い。


この状況になんで喜んでいるのか解らない。


勝てば確かに幸せが待っているが…負ければ地獄。


だから、関わらない。


もし、彼らが不幸になるか幸せになるかの二択があったら『不幸』になる選択を選ぶだけだ。


「なぁ? フルールの人生って…上手くいえないが、その汚い世界ばかりだったんだろう?」


「そうですわね、拷問に暗殺…そういう世界ですわ、否定はしませんわ」


「俺もフルール程じゃないが、人間の汚い面ばかり見ていた、だからこれからは良い面を見ないか?」


「それはどういう事ですの?」


「楽しい事や面白い事をして、毎日を過ごそうと思う…適度にお金を稼いで、面白可笑しく毎日を過ごす…どうだろう?」



「うふっぷっはははははっ…負け、本当に負けましたわ、黒薔薇を手に入れて、そこ迄野望が無い人は初めてですわ…良いですわ、その話乗りましたわ」


「それじゃ俺達はこの先、面白おかしく暮らす、それが目標だ」


「了解ですわ」


◆◆◆


トントン


「失礼します…リヒト様、お食事会の時間でございます」


ハァ~


これから憂鬱な時間が始まる。



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