第11話音楽の魔力は半端ない



 金が欲しい。

 

 小学二年生の発言ではないが、お金が欲しいのです。

 お小遣いは貰ってますよ。

 月300円。凄いよね過去の昭和、これで本当に一月持つのだから不思議な時代だ。


 そうじゃなくてそれなりに大きなお金がほしいのである。

 昭和の子供が欲しがるようなものが買いたいのではなく、未来では旧車と呼ばれる車やバイクが欲しくなった。

 未来の私は購入金額や維持費に手間暇をかけれるほどの情熱は無かったので動画や本で見るぐらいすませていた。

 それが!まだ現役で走っているではないか。

 登下校のたびに見かける旧車、農家の倉庫に乗らなくなった旧車が放置されてるが見えていると、タイムリープして以来お亡くなりになっていた物欲センサーが蘇ってきた。


 欲しいが今の俺は月300円の小学二年生のお子様。

 でも未来の無駄知識だけはある現状なのだ。そろそろ有効活用しなければもったいないなと考え始めている。

未練は解消できた。でも二度目のタイムリープ勘弁してほしい。でも万が一があるかもしれないのだ。

 対策は面白おかしく人生を謳歌すれば未練も後悔もなく死ねるかもしれない。そのためにはお金が必要だ。


と、自分本位に弁護して今まで制限したのを取っ払おう。家族と親しい人には迷惑かけません。他人は知らんが。


「た~か~ひ~さ~く~ん」


 これからの予定を組んでいていたら名前を呼ばれた。


 考え込んで下げていた視線をあげると腰に両手をつけていかにも怒ってますよと表現している担任の香山先生がいた。


「今は音楽の時間だよ。何をボーとしているのかな」


 子供に合わせた怒り方が可愛い。

 残念ながらタイムリープ後から三大欲求の一つがお休み中になった。おそらく子供の身体に欲求が引っ張られいるのかもしれない。

 本当に残念だ。


「いえいえボーとはしてません。どうすれば使えるお金が増えるのかを考えていました」


 別に知られても問題はない。所詮は小学生のたわごとにしかならないと思われるだけだ。


 と思っていたら、香山先生はピシリと音が鳴ったかのように停止した。


「貴光君・・・私のHPは底をついてるの。もう上の方から注意されるのは嫌なの・・・」


 再起動した香山先生はカタカタ震え、腰は引けて涙声だ。二十代がハムスターの様に震える姿は可愛いなぁ・・・。

 香山先生HP知っているんですね。竜かな?それとも最後の方かな?

 

 若い娘を怯えさせるのは精神的におっさんには不本意だ。安心させてやろう。


「大丈夫ですよ。欲しいもの(車やバイク)が少し高かったのでお金を貯めないと(金策して)買えないなと考えていただけです」

「そっか、欲しいもの(ゲーム機かな?)が高い(子供には一万円は)ならお小遣いを貯めないと買えないよね」


 ホッと息を吐く香山先生。そんなに苦労させたかな・・・うん、やらかしていた。今、自覚しました。


「コホン、それは横に置いといて、授業中に他の事を考えていたのはよくありません。罰として前に出て何か歌を歌ってね」

「えー!普通は注意ですみますよね」

「貴光君はそれぐらいでは反省しません。少しは恥をかいてください」


 少し本音が漏れてますよ。


 確かに授業中に思考を飛ばしていたのは悪いことだ。だから甘んじてその罰は受けよう。しかし同級生の前で一人で歌うのが罰になるとは思わないでほしい。

 やらかしてきた中年の心はそのくらいでは揺るぎもしないのだっ!


「何を歌おうかな~♪」


 お、音楽室なのでギターが置いてある。これを使うか。

 子供には大きいので椅子を用意して座ってギターを持った。

 未来の私の無駄趣味の一つ弾き語りを見せやろう。


大学生の頃、ストリートからプロになる歌手がかなりいて、友達と感化されまくったのだ。あの熱量をもっと違う方向に持っていければ・・・今は人の目もあるので涙は心の中で流そう。

 

「聞けぇ!講義をサボりまくって上達した無駄歌唱力を!」

「講義ってなに!?小学生だよね!」


 ツッコミありがとうございます香山先生。でも意味を考えてはいけませんよ。


 ついさっきに制限を取っ払うと決めたのだ。テンションがヤバいくらいに上がりまくっているのは自分でもわかるが今の俺は小学生、たまにははっちゃけよう。


 久しぶりなので一番慣れた曲にするか。


「振り返る~と・・・」


 約四分、全力で歌った。

 

 この時代にはまだカラオケボックスは田舎の方にはまだ浸透してしていないのでストレス解消に歌う場所がおっさんの行くようなスナックぐらいにしかないのだ。残念ながら小学生の俺は行けない。それに歌えるのは演歌が古い歌謡曲なので満足も出来ない。


 久しぶりに歌ったのは気持ちよかった。

 令和の最新の曲はちょっと中年には異次元過ぎて歌えないが、平成初期のバラード曲なら昭和の時代にも通じるだろう。


 さあ!拍手で称賛してくれ!今の俺は褒められるとどこまでも鼻が伸びていくぞ!


 ・・・あれ?

 音楽室なのにサイレントにかかったのかな?


 周りを見ると男子は口が半開きでポカーンとしていて、大半の女子はキラキラした目でこちらを見ている。残りの少数の女子は顔を真っ赤にしていた。


 ホワイ?何この状況?


「あのね貴光君・・・さっきの歌はなんだったのかな」


 香山先生が尋ねてきた。

 未来の曲とは言えないので適当にごまかそう。


「あーあれは外国の曲を日本語訳にしたもので曲名はトゥルーラ・・・あ、」


 言っている途中で気づいた。

 歌った曲はもろにラブソングだ。当時の男共が彼女に格好つけるために歌っていた曲だ。


 顔を赤くしている女子は意味を理解したんだな。勉強会のおかげで理解力が上がっている弊害だ。どちらも俺のせいか!あ、天宮も顔が真っ赤だ。


「いったい君は何者なの~!」


 今の生徒たちの状況に香山先生のHPは危険域に入ったらしい。俺の肩を掴んで揺らしまくる。


 流石にこの状況が、定番の俺何かやっちゃいました?だと理解できる。

 今後は人前ではっちゃけるのは事前に考えたからにしよう。

 未来知識の制限は取っ払うけどね!

 

 あ、香山先生そろそろ揺さぶるのは止めて下さい。そろそろエロエロと何かが出てきそうです。



ーーーーーーー

主人公はこれから右肩上がりで爆走します。(*´∀`)♪

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