ヒロイン・ビルド・ダンジョン

森林達木

SKILL:1 ダンジョン(初級)

入り口

目が覚めると、薄暗い洞窟だった。


「……寒い」


ゆっくりと体を起こす。

体の節々が痛い。


覚醒していくにつれ、俺は現状のおかしさに気付いた。


ここはどこだ?

俺は自宅のベッドで寝ていたハズ。

ベッドはどこにいった?

いやベッドなんてどうでもいい、ここはどう見ても自宅ではない。


地面を触るとひんやりしている。土の感触。


息を吸うと少し火の匂いがした。

見渡すと松明が点々と立っている。


松明を目で追うと前方に巨大な扉を発見した。


「あれは……?」


立ち上がり、扉の方へ近付く。


「目が覚めたなら行くよ」


俺は飛び上がった。

振り向くと、そこには誰かがいた。


「あ、その……」


「……」


目の前の人間はじっと俺を見ている。いや俺ではなく、俺の背後にある扉を……か。


俺はその人間を隈無く見た。目は合わせないようにしながら。


端的にいって。

黒髪、褐色肌のイケメン。

服には見慣れない物がついていて……あれは……胸当てだ。

まるでゲームに出てくる剣士のような装備の。


というか、よく見たら剣を背負っている。

剣士そのものではないか。


「行くよ」


「行くって、どちらへ……?」


「……」


質問には答えず、剣士は扉へ真っ直ぐ歩いていく。

そして扉の前で静止した。


「……」


「……その」


剣士は扉の前で微動だにしない。


「…………」


「……えっと」


「開けて」


「えっ?!」


俺が開けるんかい。


というか。

今の声的にーー。


「もしかして女性の方……?」


「……そうだけど」


扉の前で並ぶと、剣士は俺より小柄だった。


「……いいから早く」


「あっ、はい」


俺は言われるがまま扉を開けた。


この先に出口があるんだろうか……。

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