手に感情を乗せて

 愛してる。なんて君に絶対言えないから。だから私はその気持ちを手に閉じ込める。


「どうした?」

「いや。何もないよ」


 きらびやかなホテルの一室から出ようとするあなたの服を、私はそっと握る。もしかしたら寂しいという感情も入っているかもしれない。


「じゃあ、また来週。嫁が待ってるもんで」

「ばいばい。また来週絶対会おうね」


 こんな破局しか待っていない状況でも、来週を楽しみにしている自分がいる。嫁と子を捨てて自分を選んでくれるのではないかという希望を込めて。

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