第45話 憎き敵の親玉を倒します。が、皇帝は反則級の能力があるみたいで……

 新・紫禁城のある場所へ5人でテレポートする。

 豪華な建物が目の前に存在感を放っているが、すぐには入れない。

 が、【ルームマスター】の許可制と同じなら突破は簡単だ。

 空間魔法でお邪魔しまーすすればいいだけ。


 中に入って探すは玉座。

 ボスなんだから当然だよなあ?



 一番奥のこれでもかって豪華なドアを見つけて、もう面倒なのでいきなり空間魔法で割って入る。


 そして龍があしらわれた玉座に黒髪短髪の偉丈夫が煌びやかな服を着て偉そうに座っている。

 傍らには宰相と思しき文官がいて、あとは赤い鎧をまとった屈強な衛兵が10人ほどいた。



◇◇◇



「昨日からダンジョンのモンスターが魔石を落とさなくなっただと?」


「はい陛下。各地に配置している【メッセンジャー】スキル持ちからの報告でございます」


「魔石核兵器を新たに作れないではないか。いや支配した国に朝貢させればよいだけか……」



 お話のとこ悪いけど、翻訳機能をつけたワイヤレスイヤホンをつけて僕たちは姿を現す。


 その瞬間、赤い鎧を着た衛兵が襲いかかってくる。

 反応の速さはさすがだが、僕たち1人につき相手2人を峰打ちでダウンさせていく。


 すぐに処理も終わって、残り2人に向きあう。


「魔石核兵器のスイッチを出せ」


「下賤の者ども、陛下に話しかけること能わず」


 宰相が口を挟んで『威圧』を僕らに向けて放ってくる。

 こいつに用事はないんだが。

 こんな雑魚どうでもいいんだ。


 それより問題は皇帝と思しき玉座に座っている人間だ。


 先ほどから鑑定をしているのだけど……



ーーーーーーーーーーーーーー

逆崎 翔 レベル99999

ジョブ【森羅万象】

ユニークスキル【リバース】

ーーーーーーーーーーーーーー


 という僕の鑑定結果が返ってくるのだ。

 なんで?


 他の4人も僕と同じようで戸惑っていたが、動いたのはナディアだった。


「こいつのせいでお父さんとお母さんが…… サンダーボルト!」


 ナディアの手から放たれた雷魔法は、皇帝に一直線に向かっていき、皇帝の少し手前で反転してそのままナディアに返ってきた。


「痺れる……」


 サンダーボルトをもろに食らったナディアを見て次は三日月さんが動いた。


「ハッ!」


 メイド服の胸元から取り出した苦無を2本投擲したが、これも皇帝の少し前で向きを変えて僕と玲に飛んできた。


「危なっ」


 僕と玲は返ってきた苦無を躱す。

 そして玲は自分のポーチから槍を取り出し、距離を詰める。


「二段突き!」


 もはや神速ともいえる速さで槍を二回素早く突き刺す。


「がっ……」


 皇帝の前に向かっていった玲が吹っ飛んでこっちに帰ってきた。

 当の皇帝は動いていない。


 玲が使った槍は、SSランクの神槍ゲイボルグ。

 Dランクの古びた槍をリバースしてできる量産品だ。

 この神槍ゲイボルグには、貫通効果が付与されている。


「ダメ。貫通効果付きの武器でも跳ね返ってくる」


 やっぱりそうか。

 ジョブかスキルに反射効果を持つものがあるのだろうな。

 鑑定で僕自身の結果が見えるのは、鑑定スキルすら跳ね返しているんだと思う。


「パワーヒール! ディスチャージ!」


 なら回復効果のあるものはどうか。


 僕が放ったスキルは2つとも遮られることもなく皇帝に吸い込まれていった。


 先ほどから僕らが皇帝に攻撃しているのに宰相は動かない。

 勝利を確信しているかのごとく。


 【リバース】を試してみようか。


 【リバース】発動、相手の魔力量を反転する!


 そして僕の魔力がほぼ空っぽになった。


 参ったな、【リバース】すら反射されるのか。

 とりあえず、自分に【リバース】をかけて魔力をほぼ満タンにする。

 まさか魔力がなくなる事態が来るなんて思わなかった。


 どうやって倒そうかな? 

 身もふたもないこと言えば、一週間ほど飲まず食わずの状態にすれば人間は死ぬはずだけど。


 そういえば、フランの妹さんは魔力欠乏症だったな。

 回復を受け付けるのであれば魔力を飽和させればいいんじゃね?


「ディスチャージ! ディスチャージ! ディスチャージ! …………」


 玲たちも僕の意図を察してか、ディスチャージを使い始めた。


 が、しばらくして僕自身の魔力が回復し始めた。

 正確には発動したディスチャージ分の魔力が戻ってきていた。



「下等な者の考えそうなことよ。魔力飽和症を狙ったのであろうが無駄だ。必要以上の魔力は反射されるのだよ。陛下に死角はない!」


 なぜか宰相が自慢げに話す。

 とりあえず反射の能力を持ってるのは確定かあ。

 あと一つ、反射しきれないほどの超高火力攻撃っていう手を考えているけど、反射に限度がなかったら僕たちがただでは済まない。


 ふと横をみると三日月さんが一瞬消えてまた戻ってきた。


「あーアナザーディメンションもだめかあ。直接攻撃しないやつならいけるかと思ったのに」


 相手を異空間にご招待するスキルだが、これもだめ。

 てなると皇帝に不利になる可能性のあるもの全てが反射されるのか。


「無駄無駄無駄無駄無駄ァァァァッ! 奇襲、毒殺、誘惑、時間停止全て無駄ァ! 陛下のスキルは世界一ィィィィィィ!」


 なんか宰相のネジが飛んでるんだけど。

 心酔しすぎだろ。


 逆に考えるんだ。

 反射を突破するんじゃなくて反射が関係ない状況に持ち込めばいいんだ。

 てなるとやっぱり餓死させるのが一番かな。

 水も食料もなけりゃ絶対死ぬんだから。

 あ、そういや生きるのに必要なものがまだあったな。



◇◇◇



 こちらを見下すような目をして早く終わらないかな、的な顔をしている皇帝。


 それはひとまずおいといて、僕は宰相に話しかける。


「これから僕は皇帝を憤死させてみせるよ」


「はあ? 何を言っている小僧。陛下を殺すことなどできはしない」


「まあ聞きなよ。まず僕の正体は、裏ランキング1位の逆崎翔。あんたたちが影一族を送り込んで殺そうとした相手だ」


「ほう。お前がか。だがのこのこやってくるとはな。ここで死ぬといい」


「宰相さん、話はまだあるんだよ。影は殺して【死者隷属】で僕の下僕にしたんだ。でてこい、影」


 僕の前にぬうっと現れる影気輪。


「確かにその衣装は影一族の者。敵の手中に落ちるとは痴れ者よ」


「影潜りはわずかだけど苦戦させられたよ。じゃあ戻れ、影」


 またぬるりと地面に影が消えていった。


「で、そのあと、日本のダンジョンにいた露支那人は全滅させた。日本から魔石を持ち帰る量が激減したよね? それと、日本に新たに不法に入国させたやつらと連絡はとれていないはずだ。全部僕が都度都度殺していったからね」


「…………そんなことが、確かにあったな」


「そのあと、裏ランキングは作れなくなった。僕が『ランクアイ』のユニークスキルを喪失させたから。さらに、世界各地のダンジョンに潜り込ませた探索者が不幸な事故にたくさん遭ったはずだよね。スタンピードに巻き込まれたり、レベルが下がってたり」


「バカな……」


「あ、あと日本の国会の暴露大会とそのあとに続くSNSでの暴露ツイも僕が誘導しました。あの人たちだいたい死んでますけど、そちらで暗殺したんですよね? こちらの手間が省けましたよ」


「悪魔め……」


 お前が言うな。


「多国籍軍でユニオンアース教を攻めたとき、露支那軍人のユニークスキル消えてたでしょ。あれも僕だから」


「ユニオンアース教の呪いではなかったのか……」


「で、さっき話してたダンジョンから魔石が取れなくなったのも僕だから。……と、そろそろいいかな。皇帝さん、死んじゃったね」



◆◆◆◆◆◆


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秦 王林 レベル 7777

ジョブ【皇帝】

ユニークスキル【完全反射】

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 ユニークジョブ【皇帝】は、支配下にある者の経験値をかすめ取ることができる。そのため本人は高レベル。

 ユニークスキル【完全反射】は、所持者に不利となるものを反射するパッシブスキルで消費魔力はない。

 例えば、食事に毒物があっても毒だけ体内に排出されるし、魔石核兵器の放射線も反射できる。

 超高火力攻撃も反射できるのでもしも翔が実行していたら反射されて大ダメージを食らっていた。

 反射の対象を変更することも可能。

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