鍛錬によって無限にステータスが上がるギフトを手に入れたので、俺はこの力で最強を目指す

くちばしの子

第1話 成人の儀

「行ってきます」

 誰も居ない部屋に向かって挨拶をして部屋を出る。


 今日は教会にて成人の儀がある。

 15歳になった人間が教会で神に祈ることによって、ギフトと呼ばれる力を手に入れることが出来る日だ。

 成人の儀には高位司祭の立ち合いが必要なので、うちみたいな小さな街だと年に一回くらいしか行われない。


 ギフトは大事だ。強力なギフトを手に入れれば人生が変わると言っていい。

 ただの農民の息子だった奴が、強力なギフトを手に入れて上級冒険者となり、後に貴族の仲間入りをしたという話は、俺ら平民の中ではあまりに有名だ。


 だが、それはそれだけ強力なギフトを授かる確率が低いことを表している。


 教会へ向かう道では俺と同じ用事っぽい奴らが結構居た。

 親と一緒に向かう奴、友達と複数人で一緒に向かう奴、一人で向かう奴、様々だ。


「うげえ、これに並ばないといけないのか」

 成人の儀を受けにきた新成人達によって、教会の外にまで行列が出来ていた。

 俺はなるべく早く列が捌けるのを期待しつつ、列に並ぶ。




「俺は絶対戦闘系ギフトがいいな!」

「私は前に出て戦うの怖いから、後ろからみんなを支援できるギフトだと嬉しいんだけど……」

「僕はなんでもいいかなー、別にギフトがないと冒険者になれないってわけじゃないしね」

 そんな話が真後ろから聞こえてくる。

 冒険者志望だろうか。

 成人の儀を受けてから冒険者になろうとする人間は結構多い。俺もそれくらいしかできる事がなさそうなので、冒険者になるつもりだ。


「なんだったとしても、俺達三人で最強の冒険者になるぞ!」

「おー」

「がんばれー」

「シオンも頑張るんだよ!」

 といって後ろで盛り上がっている。

 こういう同郷の出身でパーティを組むというのはよくあるらしいが、それが結構すぐに解散するというのもよくあるらしい。


 まあそれも分かる話だ。才能は人それぞれ違うもので、片や上級冒険者の素質を持ちどんどん成長していく一方で、片や一向に成長しなければ、上に合わせれば下が付いてこれないし、下に合わせれば上は満足な待遇を受けられない……そういったこともあって元々仲が良かったチームでも亀裂が出来て行ってしまうんだろう。



「では次の人、こちらに横に並んでください」

 一時間ほど待つと、俺の番がやってきた。

 俺の前に居た人達の反応も見ていたが、喜んでる人3割、残念がってる人7割って感じだ。


 司祭の人の指示に従って目の前にある神像に祈りを捧げる。


 ――ああ神よ、いい感じのギフトをお願いします。


『ギフトが付与されました』


 と、スキルを手に入れたりした時によく聞くメッセージが頭の中で流れる。


「では、次の人――」


 次の人もどんどん処理していかないといけないので、すぐに俺は教会から出ていく。


 俺は帰路につきながら、手に入ったギフトを確認するため、ステータスを開く。

 ――――――――――

 年齢:15

 レベル:3

 HP:150/150

 MP:102/102

 力:16

 耐久:14

 敏捷:12

 技術:13

 器用:10

 魔力:8

 抵抗:9

 ギフト:修行

 スキル:『剣術Lv2』『体術Lv2』

 ――――――――――


『修行』


 なんだこれ。修行という言葉はもちろん知っているが、そんなギフトがあるなんて初めて聞いた。効果を確認してみる。


 修行――ギフト。鍛錬によって能力値を獲得する。


 ステータスをよく見ると、新たな項目が追加されており、

〈鍛錬メニューを開く〉

 というのがあった。


 開いてみる。

 ・剣の素振り1000回 報酬:技術1

 ・腕立て伏せ1000回 報酬:力1

 ・ランニング10km 報酬:敏捷1


 と表示されていた。


〈ランニング10kmを開始しますか? はい/いいえ〉

 試しにランニングの項目に触れてみると、ステータスにメッセージが出て来た。

 はいを押してみる。


〈鍛錬:ランニング10kmが開始されました。時間内に完了できない場合、ペナルティが課されます〉

〈ランニング0/10000 残り時間5:59:58〉


 ペナルティってなんだ。聞いてないぞ。……なんて言ってても仕方ないか。

 残り時間は今も減り続けている。あと6時間だそうだ。


「ま、敏捷のためだ。頑張るか」

 俺は帰る前に寄り道することに決め、走り始めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る