第2話 出逢い

「皆さん、今日はありがとうございました。明日から宜しくお願いします」

「気をつけて帰ってね。」

「はい、ありがとうございます」

「西田さん、明日待ってるよ。じゃっ」



何とか無事にお嬢様を送り返し、かなりの勢いで肩の力が抜けていた。


「主任、お嬢様も無事に帰ったことだし、もう一軒行きます?」

「いや、明日も有るしな」

「じゃあ、キャバクラとかガールズバーとか、短時間でサクッと切り上げましょうか?」


気乗りではなかったが、西田さんからの解放感か、つい誘いに乗ってしまった。

「じゃあ、案内所行きましょ。良いとこ見つけて見せますから」


「お客様、今日はどんなものお探しですか?」

「45分で一万円以内で」

「それでしたら、ここリニューアルしたばかりでキャンペーン期間でおすすめです。イノセントパラダイス」


「主任、決まりましたよ。イノセントパラダイス! 2、3分でお迎え来るそうです」



「ようこそ、イノパラへ。今日はどんな娘お探しですか?」

「こちらの禁止事項をよく読んで、お気に入りの女性をお選びくださいませ」

「じゃあ俺、さえちゃんで」


“おいおい、ヘルス店かよ。風俗なんて、数十年ぶりじゃ無いか。緊張するなぁ。今更、辞めたも言え無さそうだし、腹くくるか。”

“皆んな、可愛いけど写真加工してんだろうな。しかも皆んな若い。”

“ここは、西田さん位の娘はどんな感じなのか学びに来たと考えるか!”


「じゃあ、ゆうかさん 24歳で」

「主任、24歳は要らないんじゃ? あはははっ」

「そうでした。ゆうかさんで」

「それでは、こちらのお客様はさえさん、こちらの方はゆうかさんで。準備ができるまで、こちらでお待ちください」


「おいおい、ヘルスだなんて聞いてないぞ」

「だって、一万円ですよ。これは、行くしかないでしょう」

「きっと、変な娘が出てくるよ、大丈夫かなぁ?」

「今どきは、可愛い子しか居ないって話ですよ。案内所のお兄さんも言ってたし。どんな娘かなぁ〜、さえちゃん?ワクワクするぅ」


俺たちは、それぞれ別の廊下に通された。当たり前の話ではあるが。


「ゆうかです。今日はご指名ありがとうございます。」

手を引かれるまま、心臓が破裂しそうな緊張感で、部屋に入った。

「このお店は、よく来られます?」

「いや、はっ初めてです。」

「緊張されてます?ふふっ。お顔が真っ赤ですよ。」

「ああ、見抜かれちゃったね。」

「私も入店したばかりで緊張してるので、おあいこですよ。よろしくお願いします」


かなりの緊張で顔が見えなかったが、少し落ち着いて見ると、なかなかの美人さん。心の中でガッツポーズ取ったのは、言うまでも無い。


「何てお呼びすれば良いですか?」

とっさの質問に慌てて答えた。

「田中です!」と。

世間で多い名前だからだろう、口をついたのは。


「それじゃあ田中さん、お洋服脱いで、シャワー行きましょ。脱ぐの手伝いますね」

「あっっ、流石に自分で出来るから、平気だよ」

「じゃあ、私も脱ぎますね」


おー、ここれは展開が早い。俺の息子が完全に元気になっていた。

「じゃあ、シャワー行きましょ」

王子様状態のシャワーもどきどきだったけど、いよいよ核心に迫って来た。どうするよ、おぢさん!

「じゃあ、恥ずかしいので、ちょっと暗くしますね」

「うん! お願いします」


一通りの儀式が済んだ後で、こんな会話を交わしていた。

「ありがとう。こんな綺麗な娘にして貰えるなんて、感動したよ。ほんと、ありがとう」

「気持ちよく成って貰えたなら、私も嬉しいです。」


“男心くすぐるなぁ〜、まあ皆んなに言ってんだろうけど。”

「また来てくれますか?」

「ああ、絶対に来るよ」

「約束ですよ。約束は守るから、するんです。破るものじゃ無いから」

「だっ大丈夫、きっとね。」

「あっっ、そうだ。私のカード貰ってくださいね。」


そのカードを握りしめて、控え質で待つ、井伊と店を出た。


「主任、どうでした?俺の娘は、めっちゃ可愛くて、声なんか出しちゃって。また、絶対来よう! で、主任は?」

「俺は、まあまあかな?」

本心は、最上級の至福だったくせに、なぜかこう口に出た。


「でも、キャンペーン終わったら、高くなんだろ。そうそうは来れないな」

「ですよね〜!あー、現実に引き戻されたぁ〜」

「世の中そんなに甘くないって事だな。貰ったカードでも見て、その娘思い出してれば。」

「なんすかっ、それ?」


“あれ、皆んなに配るもんじゃ無かったのか?”

「あっ、いや別に」


上手くかわした後は、二人とも余韻に浸って家路に着いた。

ゆうかとの出逢いは、非日常の出来事から始まったのだった。

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